研究課題/領域番号 |
21H04365
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中澤 達哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60350378)
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研究分担者 |
森原 隆 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70183663)
高澤 紀恵 法政大学, 文学部, 教授 (80187947)
小山 哲 京都大学, 文学研究科, 教授 (80215425)
小森 宏美 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50353454)
池田 嘉郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80449420)
古谷 大輔 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (30335400)
松原 宏之 立教大学, 文学部, 教授 (00334615)
石川 敬史 帝京大学, 文学部, 教授 (40374178)
小原 淳 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386577)
正木 慶介 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (00757172)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 共和政 / 君主政 / 共和政と君主政の乖離 / 共和政と民主政との連動 / 共和政と国民国家との結節 / 共和政と連邦制の親和 / 「王のいる共和政」 / 「王のいない共和政」 |
研究実績の概要 |
2023年度は、本科研の従来の研究テーマ「王のいる共和政」論を軸に、必ずしも民主政と等価の関係にない近代共和政の多様性を実証することに専念し、昨年度までの成果を国際的に発信することを主要な目標に掲げた。とりわけ共和政研究の盛んなイギリスでの国際ワークショップの開催を企画した。年度始めからこの準備を開始し、年度末の2024年3月14日にオクスフォード大学歴史学部Rees Davies Roomにて、オクスフォード国際ワークショップ”European Jacobins and Republicanism”を開催した。 ここで、研究代表の中澤のほか、研究分担者の正木慶介・神奈川大学准教授、研究協力者の近藤和彦・東京大学名誉教授および阿南大・明治大学非常勤講師、そして、連携研究者のバラ―ジュ・トレンチェーニ中欧大学教授が上記テーマに基づく研究報告を行った。これを受けて、オクスフォード大学歴史学部欽定講座名誉教授ロバート・エヴァンズ、同大名誉教授ジョアンナ・イニス、ケンブリッジ大学名誉教授ジョン・ロバートソン、そして、ウォーヴィック大学教授マーク・フェルプが各報告に対してコメントをした。いずれの報告も上記コメンテーターから極めて高い評価を受けることができた。続く総合討論もふくめ8時間に及ぶワークショップを通じて、英国研究者と高度な意見交換をし見解を共有するという目的を達成することができた。なお、本ワークショップへの日英の参加者は14名であった。 以上の成果を踏まえて、2024年度の本科研の研究テーマも確定することができた。つまり、「王のいる共和政」から「王のいない共和政」への転換プロセスと、なにより「王のいない共和政」そのものに、思想史のほか政治・社会史的に研究対象を拡大させることとなった。この指針は23年度の研究成果なしに導き出せないものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は、2021年の本科研発足時に構築した以下の4つの班、すなわち、①「共和政と君主政の乖離」班(石川敬史、小山哲、正木慶介、中澤達哉)、②「共和政と民主政との連動」班(松原宏之、高澤紀恵、近藤和彦)、③「共和政と国民国家との結節」班(小原淳、小森宏美、中澤達哉)、④「共和政と連邦制の親和」班(池田嘉郎、森原隆、古谷大輔)の中で、①②班を中心に、これまでの「王のいる共和政」研究の成果を英語にまとめた。その上で、2024年3月14日にオクスフォード大学において国際ワークショップ"European Jacobins and Republicanism"を開催した。ここで高度な議論を展開し高い評価を受け、イギリス側研究者と見解の一致をみたことは、今後の本科研の研究活動にとって極めて大きな意義をもつことになる。つまり、本科研の「王のいる共和政」理解をベースに、2024年度以降、「王のいない共和政」への転換プロセスの研究に歩を進めることができるからである。同時に、「王のいない共和政」そのものに思想史的かつ政治・社会史的に研究対象を拡大させることができるからである。 なお、本国際ワークショップに備え、2023年12月28日に、ワークショップ報告予定者の報告内容を聞く準備会合を開催した。ここでは、他の研究分担者の研究進捗状況も確認した。また、ワークショップ直前の3月4日に、ワークショップ報告予定者の再度の研究打合せを行い、相互の報告内容を把握したほか、総合討論のテーマ案も論じ万全の態勢で本番に臨んだ。ワークショップ直後の2024年3月31日には、年度4度目の科研会合を開催した。ここで、科研メンバーの新年度の研究テーマを確認するとともに、2,025年3月に行う予定の国際ワークショップ報告者をも決定することができた。以上から、本科研は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、再度、オクスフォード大学において国際ワークショップを開催し、前年度に招聘した同大学欽定講座名誉教授R・エヴァンズ、同大名誉教授J・イニス、ケンブリッジ大学名誉教授J・ロバートソン、そして、ウォーヴィック大学教授M・フェルプにコメンテーターとして登壇頂く。本ワークショップは「「王のいる共和政」から「王のいない共和政」へ」をテーマとする。 言うまでもなく、19世紀以降、欧米の多くの地域で「王のいる共和政」から「王のいない共和政」への転換がおこり「民主政的共和主義」が定着した。この転換は各国特有の条件に規定されるはずである。ワークショップでは、そうした地域的偏差を意識しつつ、転換の根拠のほか、新たな「民主政的共和主義」の展開とその初期の問題点を、「君主政的共和主義」との位相のもとに検証する。 このアプローチは19世紀のみならず、20世紀の戦間期まで視野に入れることになろう。レスプブリカが君主政や貴族政の王国や帝国においてではなく、民主政の国民国家でしか実現できないという思想や原理が一般化する背景のほか、国民国家形成後の公共圏からこぼれ落ちるマイノリティーやエスニシティの誕生を、レスプブリカの再編という観点から分析する。また、民主政的共和主義の国民国家おける権威主義体制の成立を、「王のいる共和政」の遺産という観点からも考察する。 なお、研究組織を現状の4班から以下の3班に分けることで役割分担を明確にし、共同研究の効率化を図りたい。①「王のいない共和政」の思想的淵源の分析班(高澤、古谷、石川)、②「王のいる共和政」から「王のいない共和政」への転換と民主政的共和主義の浸透の分析班(小山、中澤、松原、正木)、③「王のいない共和政」の世界的拡散と国民国家における民主政的共和主義の展開の分析班(池田、小原、小森)。各班の代表1~2名が国際ワークショップで報告する。
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