研究実績の概要 |
本研究計画はオーストラリアの低周波電波干渉計実験であるMWAに参加し、世界初の宇宙再電離期からの中性水素21cm線シグナル検出を目指すものである。特にすばるHSCのLAEを用いた相互相関、および明るい背景天体からの吸収線(21cm forest)を用いて前景放射の影響を軽減し、検出を目指すことに特徴がある。今年度の研究実績概要は以下の通りである。 昨年度推定した、将来の21cm forest観測を想定したCDMサブストラクチャーの影響を見積もりについて、流体数値計算をもちいて、ガスの加熱、ラム圧や力学摩擦によるガスの剥ぎ取り効果など詳細について計算を行った。結果をまとめ論文として投稿中(Naruse et al., eprint arXiv:2404.01034)である。また、宇宙再電離期の小スケールと大スケールを合わせたハイブリッド模擬データ作成のため、オーストラリアメルボルン大学の研究者と共同研究を開始した。 相互相関関係では、昨年度から行なっているLyα emitterのサンプル構築を続けた。すばるHSCのSSP探査データだけでなく、CHORUS探査データを加えることで、赤方偏移6-7で得られているすばるHSCの主要データのほぼ全てを含めて、サンプルの最大化を図った。これらのサンプル構築を完了し、査読論文誌に出版した(Kikuta et al., ApJS, 2023)。これらと並行して、MWAを用いた宇宙再電離21cm線観測の検討を行った。 加えて、昨年度から引き続き低周波電波望遠鏡MWAで宇宙再電離期の中性水素21cmの検出を試みている。特にRFIなどの雑音や前景放射の除去、較正手法の研究開発を行った。さらに電波望遠鏡を用いたパルサータイミングアレイの研究(Kato & Takahashi, PRD, 2023)や太陽系外惑星からの電波放射に関する観測的研究(Shiohira et al., MNRAS, 2024)を行った。
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