研究課題/領域番号 |
21H04493
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鶴 剛 京都大学, 理学研究科, 教授 (10243007)
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研究分担者 |
信川 正順 奈良教育大学, 理科教育講座, 准教授 (00612582)
田中 孝明 甲南大学, 理工学部, 准教授 (20600406)
武田 彩希 宮崎大学, 工学部, 准教授 (40736667)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 天の川銀河中心領域 / 拡散X線放射 / フェルミバブル / XRISM衛星 / X線SOIPIX |
研究実績の概要 |
天の川銀河中心領域(GC)から,拡がったX線プラズマの熱的活動や,GeVのフェルミバブルなどの相対論的非熱的活動が発見されている.これらの活動のエネルギー源は何であろうか?この問いに答える鍵は,熱的から非熱的への移行フェーズである準相対論的粒子にある.申請者らは最近,準相対論的粒子からの中性鉄K輝線と,硬X線帯域の非熱的制動放射を初めて検出した.さらに申請者は,準相対論的イオンの多重電離が作る中性鉄KαLi構造の精密分光から,重イオン組成を決める方法を発案した.本研究では,これらの放射成分をXRISMとNuSTARで観測し,準相対論的陽子と電子の空間分布,エネルギー総量,重イオン組成等を初めて決め,GCの高エネルギー活動のエネルギー源に制限を与える.加えて広域サーベイを可能とする広視野・高感度硬X線検出器の実現のため,独自のデジタルX線SOIPIX素子を開発する.今年度は,(1) 2023年度に打ち上げるXRISM衛星の観測計画を立案するために,XMM-Newtonによって行われたGCの観測データをすべて集め,連続成分および,Mg, Si, S, Feの各放射輝線における広域マップを作成した.その結果,Fe-K輝線の透過幅の非常に大きい構造を検出した..(2) GCの拡がったX線プラズマの起源解明のため,電荷交換反応によるX線放射の観測の検討を開始した.(3) デジタルX線SOIPIX素子の実現に向け,素子に内蔵するDACおよび定電流源の設計とTEGの試作を行った.(4) 従来,小型のX線SOIPIX素子を大型化することで性能劣化が見られた.これを解決するため,過去の大型素子の設計を再検討し,原因の抽出を行った.これを解決した大型素子「XRPIX-X」の設計と試作を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の推進のために,XRISM衛星の実現が必要であるが,その開発は順調であり,予定通りの2023年度の実現が見込まれており,特に問題はない.XRISMによるGC観測計画立案のために,従来の衛星のGCの観測データの総まとめ解析を開始しており,2021年度はXMM-Newtonを行った.その結果,特異な構造を複数検出することができた.本研究室で並行して進めている超新星残骸のデータ解析をヒントに得て,GCにおける電荷交換反応によるX線放射の可能性の検討を新たに始めた.デジタルX線SOIPIXの開発は,完成に向けた年次計画通りに順調に進んでいる.以上から,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
XMM-NewtonのGCマッピングから検出した特異な構造を持つ領域の解析を進め,論文としてまとめたいと考えている.これに続いて,他の既存の衛星のGCのアーカイバルデータの解析もすすめたいと考えている.GCにおける電荷交換反応によるX線放射の可能性を引き続き検討し,可能なら既存の衛星データでそのX線放射の兆候の検出を試みる.デジタルX線SOIPIX素子の開発として施策したDAC・定電流源を搭載TEGとXRPIX-Xの性能評価を行う.また,シーケンサ部の設計を行い,TEGの試作を行う.これらをまとめた素子の試作を2023年度に行う方向で開発を推進する.
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