研究課題/領域番号 |
21H04512
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
井田 茂 東京工業大学, 地球生命研究所, 教授 (60211736)
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研究分担者 |
兵頭 龍樹 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 国際トップヤングフェロー (20814693)
佐々木 貴教 京都大学, 理学研究科, 助教 (70614064)
玄田 英典 東京工業大学, 地球生命研究所, 教授 (90456260)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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キーワード | 衛星形成 / 惑星形成 / 惑星探査 |
研究実績の概要 |
火星衛星については、火星への巨大天体衝突による形成モデルを詳細に検討した。惑星への天体衝突で飛び出す物質の組成や相は、衝突天体の組成や質量により大きく変わる。蒸発や凝縮といった現実的な相変化を組み込んだ高精度衝突数値計算をパラメータを変えて系統的に実行した。その結果、衝突天体の氷成分が多いと、形成される円盤の温度上昇が劇的に抑えられ、岩石成分は未分化のまま残ることを示し、巨大天体衝突でも現在観測されている火星衛星のスペクトルデータを説明できる可能性を示した。 土星リングのすぐ外側に存在する順行衛星はリングの拡散進化によって形成された可能性がある。そのためにも土星リングの年齢(いつできたか)を理解することは土星の衛星形成の理解において重要となる。リング粒子はほど100%氷でできていて、観測からは粒子表面は非常にクリーンであることがわかっている。しかし、観測されている惑星間塵の量を感げが得ると、惑星間塵が表面に降り積もって、表面は岩石成分で汚れていくので、土星リングは形成されてから間もない(たとえば1億年以内)という説が提唱されている。われわれは、惑星間塵の降り積もりは高速なので表面は汚染されず、土星リングの形成は土星形成と応じき(45億年前)でも矛盾はないことを示した。さらに、多数のリング粒子と衛星の共進化を調べるため、高精度重力N体シミュレーションを実施し、土星探査機カッシーニが発見したリングの多様な構造の多くが、リング粒子と衛星の重力相互作用と粒子間非弾性衝突で説明がつくことを示した。 天王星の氷衛星については、氷衛星の熱進化に関する三次元流体数値シミュレーションのコード開発を行い、汎用性の高い数値計算コードを完成させた。また実際の氷衛星の内部構造計算への適用へ向けて準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
火星への氷岩石混合天体の衝突についてのシミュレーションによって、衝突天体の氷成分が多い場合、氷成分の蒸発によって岩石成分は未分化のまま残ることを示した結果は非常に重要であるため、何度か学会発表を行った上で、現在、投稿論文を執筆中である。関連して、天王星における巨大天体衝突の詳細なシミュレーションも行い、先行研究で用いられていた様々な状態方程式を全て実装し、状態方程式ごとの数値計算結果の比較を行い、その物理的解釈についての検討を進めている。 土星リング粒子への惑星間塵の表面への降り積り(衝突)に関する研究は、土星リングの形成タイミング、形成メカニズムを制約する重要な結果であり、すでに論文は投稿中である。多数のリング粒子と衛星の共進化を調べる高精度重力N体シミュレーションの結果は国際会議で発表をして注目され、論文はすでに海外の有名学会誌 (Icarus) に受理された。 さらに、小惑星のまわりの微小衛星の形成過程に関する理論研究も始めた。小惑星Didymosの周りを回る衛星Dimorphosの形成がDidymosの高速スピンによって引き起こされる表面物質の雪崩によって起こるという興味深い可能性を数値計算によって示し、論文を Icarus に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
火星は岩石主体の惑星で衛星も岩石主体、天王星は氷主体の惑星だが衛星は氷・岩石が半々の組成であるが、それらの衛星形成について、共に氷岩石混合天体衝突を起源としているのではないかという興味深い可能性が出てきた。この問題ついて、氷岩石混合天体衝突は複雑なプロセスであるため、まずは衝突シミュレーションの先行研究で用いられていた様々な状態方程式を全て実装し、状態方程式ごとの数値計算結果の比較を行い、その物理的解釈についての検討を進める。そして、天体衝突に伴う円盤形成(衝突シミュレーション)、周惑星円盤の時間進化(半径方向一次元の拡散方程式による解析)、周惑星円盤内での衛星形成(N 体計算)を一般的にシームレスに解くスキームを開発し、火星と天王星の衛星系の形成を統一的に説明するモデルを構築する。
土星のリング・衛星については、解析する数値スキームは完成し、観測結果を説明することが可能になってきた。土星探査機カッシーニはすでに停止しているが、これまでに取得した未解析のデータは膨大に残っている。今後は観測データを解析している海外の研究チームとの共同研究を積極的に進めていきたい。
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