研究課題/領域番号 |
21H04533
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 健郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30209639)
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研究分担者 |
前田 英次郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20581614)
KIM JEONGHYUN 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20844591)
王 軍鋒 名古屋大学, 工学研究科, 研究員 (20898415)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 力学的適応 / 形態形成 / ものづくり / 骨 / 珪藻 / バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
A.組織内力分布を細胞レベルで明らかにする手法の開発:組織内力分布を分子レベルで明らかにするため,FRET型張力センサが開発されている.最近,我々はこのセンサを全身で永続的に発現するトランスジェニックマウスの開発に成功した.このマウスから単離した細胞は張力の変化により蛍光が変化する.この細胞の懸濁液を微細針で組織に注入し,ひずみゲージとして利用する方法を検討した.マウスの胸大動脈から単離した平滑筋細胞を増殖させ,これをラット胸大動脈組織に注入して5日間培養したところ,細胞が組織に生着し,元々の平滑筋細胞と同じ方向を向いてくることが判明したが,培養7日目ではこの配向は消失した. B.幼若骨組織への力学負荷による力学的最適構造の自発的創成:孵化直後の鶏雛の脛骨から軸方向に垂直に切り出した薄切片(厚さ0.2mm程度)に引張を加えて培養した.我々の以前の研究と同様,石灰化が促進されたが,石灰化に試料の周辺部から中央部に向けて進行するモード1と,中心から周辺に拡がるモード2の2つのモードがあることを見出し,モード1は引張により変化せず,引張により変化するのはモード2であることが判明した. C.珪藻の被殻形成過程の詳細観察と力学刺激の影響の検討:長円筒状の珪藻であるAulacoseiraに3点曲げを加えつつ培養しても折れずに伸長するのは細胞内圧が高いためではないかと考え,幾つかの方法で細胞内圧の推定を行った.培養液の滲透圧とAulacoseiraの成長率の関係からは50kPa程度,アルカリで処理して珪藻を分解したときの被殻の運動の解析からは1300kPa程度と推定された.まだ内圧のオーダーを推定するところまで行っていないが,100kPa前後の高い圧力が生じている可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上手く行かないことが判明した課題もあるが,研究実施計画の内容は概ね実行できているから.
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今後の研究の推進方策 |
骨のテーマを2つに分け,以下の4点について研究を進める: A.組織内力分布を細胞レベルで明らかにする手法の開発:昨年度の研究を継続し,ひずみゲージ細胞を微細針で組織に注入し,ひずみゲージとして利用する方法の検討を継続する.初年度はマウスの胸大動脈から単離した平滑筋細胞を増殖させ,これをラット胸大動脈組織に注入したが,今年度はマウスの組織について同様の検討を行う. B1.幼若骨組織への力学負荷による力学的最適構造の自発的創成:孵化直後の鶏雛の脛骨薄切片に引張を加えて培養する研究を継続する. B2.骨単位構造形成原因の探索:緻密骨内部の骨単位は同心円状のハバース層板で構成されているが,このハバース層板内のコラーゲン線維の配向があたかもゴルフクラブのシャフトのように,互い違いになっており,これにより,捩りに強い構造を作っている.この形成原因を探るため,円錐内面で培養した骨芽細胞の挙動を観察する. C.珪藻の被殻形成過程の詳細観察と力学刺激の影響の検討:長円筒状珪藻のAulacoseiraの被殻形成過程を詳しく調べる.新たに形成する殻が蛍光を発するようになる試薬PDMPOを入れた培地中で培養し,新たな殻がどのようにして形成されていくのか観察する.
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