研究課題
昨今、新型コロナウイルスの世界的な流行に伴い、汎用的なウイルス感染診断法の確立が急務とされている。従来の感染診断では、ウイルス由来のRNAやDNAをPCRなどで増幅し検出する方法と併せて、タンパク質抗原を抗体反応により検出する方法が主流であったが、それらは一般的に、感度・精度・計測時間の何れかにおいて技術的な欠点を内在しており、大量の検体を高効率・高感度・高精度に解析し、感染診断につなげることが極めて困難な状況にあった。この問題を解決すべく、本提案課題では、独自のデジタル検出技術を基盤とし、ウイルス由来の遺伝子を1分子単位で高感度・高精度・短時間に解析できる革新的な非増幅核酸検査法を確立することを目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、CRISPR-Casを用いた独自の非増幅核酸検査法「SATORI法」によって検出できるウイルス遺伝子のレポートリーを増やすことに成功し、さらには、装置の自動化や小型化により、point-of-care testing(POCT)に対応した非増幅検査基盤が確立しつつあると言える(Shinoda et al., Commun. Biol. (2022), Iida et al., Lab chip (2022)など)。これらの成果は、基礎研究としての先進性・革新性だけでなく、実用化への足掛かりになるものであり、学術的・社会的な意義は極めて高いと考えている。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的であった、1) CRISPR-Casによる非増幅核酸検査法の高度化、2)検出系の並列化・多元化の両方を達成することができたため、本年度の研究はおおむね順調に進展したと考えている。
引き続き、独自のデジタルバイオ分析技術の高度化による検出対象の多様化を実現するとともに試薬/消耗品の最適化を行うことで、将来のパンデミックに対応すべく、POCTに対応した技術基盤の確立を目指す。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 11件)
Lab on a Chip
巻: 23 ページ: 684-691
10.1039/D2LC00741J
Communications Biology
巻: 5 ページ: 473
10.1038/s42003-022-03433-6