研究実績の概要 |
昨今、新型コロナウイルスの世界的な流行を経験し、汎用的な感染症検査法の確立が急務とされている。従来の感染症検査では、病原体由来のRNAやDNAをPCRなどで増幅し検出する方法と併せて、タンパク質抗原を抗体反応により検出する方法が主流であったが、それらは一般的に、感度・精度・計測時間の何れかにおいて技術的な欠点を内在しており、大量の検体を高効率・高感度・高精度に解析し、感染症の診断につなげることが極めて困難な状況にあった。この問題を解決すべく、本提案課題では、独自のデジタル検出技術を基盤とし、病原体由来の遺伝子を1分子単位で高感度・高精度・短時間に解析できる革新的な非増幅遺伝子検査法を確立することを目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、CRISPR-Casを用いた独自の非増幅遺伝子酸検査法「SATORI法」によって検出できる病原体遺伝子のレポートリーを増やすとともに、検体から複数の病原体の遺伝子を直接検出できる「Direct-SATORI法」や小型自動検査装置の開発に成功し、point-of-care testing(POCT)に対応した非増幅遺伝子検査の基盤が確立しつつあると言える(Ueda et al., Anal. Chem. (2023), Iida et al., (投稿中)など)。これらの成果は、基礎研究としての先進性・革新性だけでなく、実用化への足掛かりになるものであり、学術的・社会的な意義は極めて高いと考えている。
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