研究課題
新概念の提案が理論から続くトポロジカル電子物質を対象として、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用しつつ、そのスキームだけでは探索・開拓することが難しい物質群の開発に挑戦している。① MIから発掘するスジの良い化合物(「経験」と「勘」に基づく実績を活かし新概念へ発展)② 現状のMIでは見逃してしまう化合物(複数フェルミ面系、構造敏感な電子相、低次元系など)③ 今後のMIでも扱うことが難しい化合物(構造非対称系、磁性系、強相関系、超伝導系など)などを独自の物質・現象・物性・機能の開拓を行う戦略として設定し、「第一原理計算」「純良単結晶育成」「先端分光計」「極限環境物性評価」を武器として実証実験を推進した。特筆すべき成果としては、中身(3D)と表面(2D)は絶縁体であるが縁(1D)には特殊金属状態を生ずる「高次トポロジカル絶縁体」として Bi4Br4 を確立できたこと [Nature Materials] や、対称性の保護によって運動量空間の高対称点に電子状態が縮退した「クラマースワイル半金属」として CoNb3S6 を確立できたこと [Phys.Rev.B]、空間反転の破れた PbTaSe2 の超伝導状態においてダイオード的な挙動を発見したこと [Nature Commun.] 、歪みでトポロジカル電子相の転移が生ずる TaSe3 を発見したこと [Nature Materials]、伝導電子が局在スピン・軌道の複合自由度と強く相互作用することで現れる「多極子ポーラロン」の準粒子状態をもつ CeSb を発見したこと [Nature Materials] などが挙げられる。
1: 当初の計画以上に進展している
研究実績の概要に記載した通り、独自に設定した研究戦略の遂行が順調に進んで、初年度ながら多くの成果を得ることが出来た。具体的には、インパクトファクターの大きな Nature Materials 誌への3報と Nature Communications 誌への2報の掲載を含む、計18報の論文発表ができた。加えて、7回の招待講演を含む、国際会議および国内会議での口頭による成果発表も計58回行った。
引き続き、マテリアルズ・インフォマティクスを活用しつつ、そのスキームだけでは探索・開拓することが難しい新しい種類のトポロジカル電子物質を、独自の研究戦略をもとに開発してゆく。研究計画遂行への方法論の有効性を初年度に実証することできたので、この勢いを維持してゆく。第一原理計算を用いた物質選定、純良単結晶試料を準備しての物質開拓や物性評価、角度分解光電子分光法による電子構造の直接観察、マイクロフレーク単結晶を用いたデバイス作製による性能評価や機能実証といった、各チームのもつ研究の武器を最大限に活用し、相補的な役割分担のもとで研究計画を推進してゆく。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 10件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (57件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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