研究課題/領域番号 |
21H04705
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 弘 京都大学, 高等研究院, 研究員 (50183843)
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研究分担者 |
板東 俊和 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20345284)
ナマシヴァヤム パンディアン 京都大学, 高等研究院, 講師 (20625446)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 遺伝子発現制御 / ヌクレオソーム / DNAナノ構造体 / AFM解析 |
研究実績の概要 |
本研究提案は、ヌクレオソームを中心とした遺伝子発現の機構を1分子レベルの可視化技術を通じて解明することを目的とする。そのために、まずヌクレオソームの空間配置や相互作用から生まれる遺伝子発現の動態の可視化と機構の解明を行い、遺伝子ネットワークを制御するための新たな分子の開発と細胞への応用を進めている。 令和4年度の主な研究成果を以下に挙げる。(1)遠藤らとの共同研究として、DNA origamiを基盤とする単分子観測研究を進め、細胞内でのDNAナノ構造体の光制御法を開発した。 (2) 塩田らとの共同研究として、RNA G4構造が神経細胞に与える影響を解析評価し、特徴的な遺伝子発現抑制を確認した。(3)Nanoporeを用いるRNA配列内の変異型塩基の解析技術への応用を試行し、変異型塩基に対する応答を確認した。一連の技術開発によって細胞内の核酸が関連する事象を解析評価する研究が進展している。 また、(4) 上久保らとの共同研究として、Runx結合配列を標的としたピロールイミダゾール(PI)ポリアミド誘導体を用いて、マウスに移植した各種ヒト腫瘍細胞に対する増殖抑制効果を解析評価した。(5) GAA繰り返し配列を標的とするPIポリアミドconjugatesの開発の一環として様々な誘導体を合成し、それらの活性比較によって構造内の極性が遺伝子発現へ与える影響を解析評価した。これらの解析結果は、細胞内クロマチン構造の機能制御を目指す上で役立つと期待する。 これらの研究成果によって、遺伝子発現機構の分子レベルでの解明、並びに、遺伝子ネットワークを制御する機能分子開発が順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者は、DNAナノ構造を活用した一分子観察技術と様々なPIポリアミド誘導体による遺伝子発現制御技術を駆使して、遺伝子発現機構やネットワークの解明を目指している。 令和4年度は、遺伝子発現制御に関する研究展開としてKyubong Jo, Hanbin Mao, Xuhong Qianらと国際共同研究を進め、DNA高次構造から得られた研究成果を論文として報告した。また、Runx配列やGAA繰り返し配列を標的とする様々なPIポリアミドconjugatesの開発や、DNA origamiを基盤とするDNAナノ構造体による細胞内応用が進み、遺伝子発現ネットワークの制御に向けた方法論を拓くことができた。なお、令和4年度にDNA高次構造解析に向けた蛍光プローブ開発に必要な蛍光測定装置の故障があり、研究費繰越が発生した。予期せず起きた計画遅延であったが、結果として本研究期間内で設定している研究目的の達成に与える影響は軽微であった。以上、研究代表者は、遺伝子ネットワークを制御する機能分子やDNAナノ構造体を用いる解析技術を駆使し、本研究目的を当初の計画以上に進展させることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、原子間力顕微鏡を活用して、一分子のDNAやタンパク質の動きを直接観察可能にする独創的な解析手法の研究開発を進めており、国際共同研究において有効に活用している。また近年、ミトコンドリアDNAやG4高次構造を標的とする蛍光性解析プローブの開発や、ヒト細胞内の疾患性リピート配列を標的とする遺伝子ネットワークの制御法の開発を進めている。現在までの成果を基に最終年度に向けて、遺伝子発現制御技術の実用化を志向している。
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