研究課題/領域番号 |
21H04712
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾仲 宏康 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (80315829)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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キーワード | 中分子創薬 / RiPPs / 天然物創薬 / ペプチド |
研究実績の概要 |
創薬における構造プラットフォームとして非常に有望な中分子天然物であるリボゾーム翻訳後修飾ペプチド(RiPPs)は、アミノ酸配列の組み合わせとアミノ酸側鎖の翻訳後修飾により、極めて多様な構造バリエーションを取ることが可能である。RiPPsの更なる有効活用のためには、様々な化学構造のRiPPsを自由自在に創製できる技術が必要である。本研究では申請者自ら発見したラクタゾール(LZ)、ゴードスポリン(GS)、ゴードビオニン(GV)を母核として、これまでに開発した世界初の「遺伝子情報からの完全なin vitro再構成生合成系」等を用いて、既存の天然物の構造多様性を凌駕する人工非天然型RiPPsを創製し、医薬品リード化合物へとつなげることを目的とする。本研究は、I. リポペプチド群のゲノムマイニングからの多様性拡張、II. チオペプチド生合成のin vitro再構成系を用いた多様性拡張と構造基盤の確立、の二つのテーマからなる。 今年度は1に関しては、ゲノムマイニングと脂肪酸末端部位基質の安定同位体取り込み実験から、新規RiPPsリポペプチドであるソラビオマイシンを発見し、精製、構造解析に成功した。また、RiPPsリポペプチド生合成における鍵酵素となるRiPP部位とポリケタイド部位を縮合する酵素GdvGの結晶構造解析に取り組んだ。2に関しては、GSに3種の細胞膜透過性ペプチドを付加したGSアナログの作製を試みた。しかしながら、現時点では異種発現株の作製まで至ったが、発現が認められていない状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請計画は以下の二つからなる。I. リポペプチド群のゲノムマイニングからの多様性拡張、II. チオペプチド生合成のin vitro再構成系を用いた多様性拡張と構造基盤の確立。 1に関しては、新規RiPPsリポペプチドであるソラビオマイシンを発見し、精製、構造解析に成功したことが特筆され、現在論文投稿準備中である。また、RiPP部位とアシル側鎖部位を縮合するGdvGのX線結晶構造解析に関しても進めており、現在複数の条件で結晶の取得には至っているが、基質との共結晶の取得までは至っていない。 2に関しては、ゴードスポリンに3種の細胞膜透過性ペプチド(TAT, penetratin, Bac7)を付加したゴードスポリンアナログの作製を試みた。しかしながら、現時点では異種発現株の作製まで至ったが、発現が認められていない状況である。また、新たにmRNA display法によって共同研究者から得られたラクタゾールをベースとした新規環状ペプチドの放線菌におけるin vivo大量調製法の確立も行った。本実験は当初はそれら環状ペプチドのアミノ酸配列がオリジナルのラクタゾールとは全く異なるため、発現が全く見られなかったが、発現ホストの変更や発現ベクターの改変、培養条件のチューニングによって、リッターあたり数十ミリグラムの発現に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本申請計画におけるI. リポペプチド群のゲノムマイニングからの多様性拡張に関しては、本年度発見した新規RiPPs、ソラビオマイシンの生物活性評価を進める予定である。また、ソラビオマイシンの生合成経路に関しても生合成遺伝子解析から知見を得たい。 gdvGホモログを含有する未知生合成クラスターより、遺伝子破壊実験などを通して、新規RiPP-PKハイブリッド化合物を同定する実験に関しても、本年度は遺伝子破壊に苦戦し、結果が出なかったが、形質転換系の確立に向けた条件検討を行い、引き続き破壊株の作製にトライしたい。GdvG結晶化に関しては、GdvGと相互作用をすると考えられるポリケタイド合成酵素のACP部位、および基質となるRiPP部位との共結晶を行う予定である。 II. チオペプチド生合成のin vitro再構成系を用いた多様性拡張と構造基盤の確立に関しては、引き続き、細胞膜透過性ペプチドとの融合ペプチドの発酵生産を発現ホストの変更や発現ベクターの改変、培養条件のチューニングをすることによって改善を試みたい。
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