研究課題/領域番号 |
21H04840
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
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研究分担者 |
菊地 奈湖 (間石奈湖) 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (00632423)
樋田 泰浩 北海道大学, 大学病院, 准教授 (30399919)
大廣 洋一 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40301915)
松田 彩 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (60514312)
上田 倫弘 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 口腔腫瘍外科医長 (80839910)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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キーワード | 腫瘍血管 / 微小環境 / 免疫 |
研究実績の概要 |
Biglycan (Bgn)について免疫環境に対する作用を詳細に解析した.またBgn血管内皮コンディショナルノックアウト(CKO)マウスを用いて, TEC-Bgnの免疫環境への影響を解析した.免疫チェックポイント分子の発現変動, マクロファージ(Mφ)のM1/M2極性変化,骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)やT細胞サブセット(CD8陽性細胞傷害性T細胞:CTL,制御性T細胞:Treg)やがん関連線維芽細胞などの遺伝子変動を網羅的に解析した.また,これまでBgn以外にも見出しているTEC由来分泌因子 (アンジオクラインファクター) の発現Xを病理検体と血液検体を用いて解析した.血中レベル高値ならびに組織中のTEC発現が確認されたマーカーに関して,siRNAによるin vitro機能解析を行った.次にMENDやアデノ随伴ウイルスAAVによる腫瘍へのin vivo siRNA 送達実験により血管新生抑制,血管正常化作用の有無により評価する.さらにTECファクター阻害による免疫環境への影響を解析した.がん細胞,マクロファージあるいはTEC自身の免疫チェックポイント分子, PD-L1発現低下, Mφの極性変化,またTreg の減少とCD8陽性CTLの増加,CTLの活性化(Granzyme), がん関連線維芽細胞の減少と線維化の抑制, 骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC)の減少など,免疫環境の正常化が起こることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Biglycan (Bgn)のin vivo siRNA 送達実験により血管新生抑制,血管正常化作用といったKOマウスと同様の所見を得,さらに免疫微小環境の正常化が得られることもわかった.論文発表を行うことができた.また,TECのLOX-1, 酸化LDLシグナルの活性化による骨髄由来免疫抑制細胞の動員などを見出し, それがBgnによるLDL結合であることが起点であることなども明らかにし,血管と免疫細胞の新しい相互作用を明らかにして論文化することができた.他のアンジオクラインファクターについても現在ヒト血清を用いた解析を進めておりヒト臨床への外挿性の検証を開始していることから順調に進んでいるとした.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,TECアンジオクラインファクターの診断・治療薬への応用と免疫療法効果向上につなげる. Bgnについては,阻害剤を既存薬のライブラリーから探索中である.その際,私たちが既に樹立した不死化ヒトTECとコントロールとして同一患者由来の不死化正常血管内皮(NEC)を用いている.なお,不死化ヒトTECのBgn高発現は確認済である.Bgnのコンパニオン診断への有用性については,免疫療法前後の患者血液検体を用いて血中Bgnと治療成績の関連について解析する.新規TECアンジオクラインファクターについても臨床検体を用いて解析し,診断マーカーとしての有用性を検証する.阻害剤についてはBgn同様に既存薬スクリーニングを行う.絞り込まれた薬剤をin vivo 腫瘍モデルにおいて免疫チェックポイント阻害剤,あるいは血管新生阻害療剤との併用効果を検証する. また,免疫療法に併用する際の投与順が与える免疫環境への違いを解析する.現在,免疫療法薬と血管新生阻害剤は同時に投与されているが,私たちはCTL動員,抗がん剤送達性を改善する血管新生阻害剤を免疫療法の前に使う方が効果的ではと考える.先行薬や同定されたTEC阻害剤の併用実験に,投与順の検証も加える.
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