研究課題
大気中及び海水中のヨウ素類の計測を高度化するために、各種要素技術を開発した。イオンクロマトグラフィーにオートサンプラーを導入して自動化し、多数の試料が分析可能となった。IOラジカル計測のためのMAX-DOASでは、サブpptレベルの鉛直分布を最適に推定できるよう、初期濃度高度分布の設定等を評価した。大気ヨウ素粒子・ガス捕集のための2段式フィルターサンプラーを試作し、ICP-MSでの分析方法等について検討した。また、ボックスモデルおよび3次元大気化学輸送モデルでのシミュレーション結果を観測データと比較した。ヨウ素類の発生や化学反応を考慮しても、3次元モデルは低緯度域においてオゾン濃度を過大評価する傾向が残り、不均一反応を追加するなどの感度実験を通じた予備的な評価を開始した。海洋地球研究船「みらい」のMR21-03航海において、洋上大気中のオゾンとIO等の計測や、表層海水の採水と試験的な状態別ヨウ素化学分析を行い、海面水温・クロロフィルなどの情報を加え、これまでのデータと合わせて時空間変動とその要因を解析した。南北半球の広い緯度範囲にわたる大気IO濃度分布が海面水温と対応すること、IOとオゾン濃度の逆相関が低濃度オゾンの範囲まで観測される点から、オゾン濃度に依存しないヨウ素揮発過程が想定以上に重要である可能性を指摘する論文を発表した。対流圏オゾンアセスメントレポート第2期(TOAR-II)でのOceansワーキンググループの活動として、全球的評価の視点で「みらい」などの船舶や航空機によって計測された海上の大気オゾンデータを世界的に収集開始し、ハロゲン化学がオゾンに与える影響を世界の複数モデルで評価してゆくための道筋を定期的にオンライン会合を持ち議論した。
2: おおむね順調に進展している
計測技術の改良、航海観測、モデルの高度化が想定どおり進展したため。サンプラーの構築についても、繰越の範囲で目的を達するものを製作することができた。
大気・海洋観測データの交換と学際的なデータ解析、観測とモデルの連携、国際連携などについて、これまで以上に推進してゆく。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 22 ページ: 4005-4018
10.5194/acp-22-4005-2022
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20220331/