研究課題/領域番号 |
21H05015
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 実 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (10312258)
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研究分担者 |
森 茂生 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20251613)
小林 亮 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (50613395)
山本 瑛祐 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (60827781)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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キーワード | 酸化物原子膜 / ナノシート / 誘電体 / 蓄電キャパシタ |
研究実績の概要 |
本研究では、次世代蓄電デバイスの開発を目指した新たな試みとして、酸化物原子膜「ナノシート」をベースとする革新的誘電材料・デバイスの開発を行う。本年度は、新材料開発とデバイス応用を中心に研究を進めた。 新規強誘電体、高誘電性ナノシートの開発に向けては、ペロブスカイトナノシートをテンプレートとして利用し、厚み、組成、構造を精密に制御して層状ペロブスカイトを合成する鋳型合成法を開発した。鋳型合成法による材料開発を推進し、Cs(Bi2Srn-3)(Tin-1Nb)O3n+1などの新規強誘電体および剥離ナノシートの開発に成功するとともに、層数に依存した強誘電発現機構スイッチングというユニークな特性を発見した。また、昨年度開発したTi置換Ca2Nan-3NbnO3n+1の最適組成の検討を進め、蓄電デバイスに好適な高誘電率(> 1000)と高耐電圧(> 4 MV/cm)を併せ持つナノシートの開発に成功した。 他方、デバイス面では、Ca2Nan-3NbnO3n+1ナノシートおよびそのTi置換体のキャパシタを作製し、蓄電デバイスの特性評価を実施した。その結果、ナノシートキャパシタでは、高誘電率化と高耐電圧化が同時に実現し、従来の高誘電体、強誘電体薄膜で到達困難な高エネルギー密度(500 J/cm3)を実現した。また、RuO2、GOナノシートを電極としたオールナノシートキャパシタ素子を作製し、高容量化が実現可能という予備的知見を得た。 さらに、典型誘電体や電極ナノシートの開発を目指し、新規合成法の開発や剥離ナノシート技術の高度化にも取り組んだ。これらの合成技術を貴金属、酸化物、複合アニオン系に適用することで、従来合成が困難であった金属ナノシート(Au, Pt, Pd)、Ru1-xCoxO2、酸フッ化物など広範なナノシート合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蓄電デバイスに好適な高誘電率と高耐電圧を併せ持つ新規材料の開発に成功し、当初目的のナノシートの高誘電率化、高容量化を達成した。新規ナノシートをベースとした蓄電デバイスの開発も進め、従来の高誘電体、強誘電体薄膜で到達困難な高エネルギー密度(500 J/cm3)を実現した。さらに、典型誘電体におけるナノシート技術の適用や電極ナノシートの開発など、材料合成、機能開拓において当初の研究計画において予見していなかった新たな展開がみられ、当初を上回る成果があった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を通し、ペロブスカイトナノシートでは、巨大分極(高誘電率化)と高耐電圧化が同時に実現し、従来のトレードオフを解消した蓄電デバイスの設計・開発が可能となることが明らかになりつつある。今後は、材料開発とデバイス応用に注力し、申請時に掲げたナノ誘電体の学理探究、蓄電デバイスの革新を目指した研究を推進する。これにより、ナノシートの誘電キャパシタにより、従来の誘電材料の性能を凌駕し、リチウム二次電池に匹敵する高エネルギー密度の実現を目指す。 また、本研究で開発したボトムアップ合成法を広く無機化合物や金属系に適用することで、新規ナノ機能の創出やグラフェンを凌駕する機能開拓を目指す「ポストグラフェン研究」の新展開を図る。
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