研究実績の概要 |
衝撃波の数値シミュレーションに関して予備的研究を実施した。不連続な性質を持つ衝撃波を伴う流れを数値解析するときには、衝撃波の物理的挙動とは異なる「衝撃波異常解」が発生しうる。本研究でも衝撃波異常解が発生する恐れがあったため、2次元有限体積法により空間を移動する衝撃波(移動衝撃波)について数値実験を実施した。移動衝撃波の1次精度計算では、中強度の衝撃波(衝撃波マッハ数が1.2)は安定的に計算できた。一方で、本研究が対象とする弱い移動衝撃波(マッハ数1.01)の計算では、広く使用されている数値流束関数(Roe, AUSM+-up, SLAU2など)では衝撃波捕獲厚さの不安定な増加などにより、許容できる解を得られなかった。またこの課題は適切なスキーム、制限関数の選定により一部は改善されることが分かった。 実験では、衝撃波形成装置である衝撃波管における衝撃波形成特性について予備的研究を行った。本研究で対象とする弱い衝撃波の形成特性はこれまでに調査が乏しく、衝撃波管実験の再現性を担保する観点からも、隔膜として使用されるセロファンの破断現象と形成衝撃波の関係を明らかにする必要があった。また一般物理の観点からも、応力が作用するプラスティック隔膜の破断現象は明らかでなく、破断現象の解明は学術的な意義があった。実験では、隔膜前後の圧力差、実験室湿度、隔膜の寸法を変えて破断形態を観察した。き裂伝播速度は上記実験条件に依らず一定であり、およそ0.86km/sであった。また、形成されるき裂の数は、隔膜に作用する初期応力と線形の関係で表された。こうした隔膜破断現象に対して、衝撃波管では代表寸法の50倍の衝撃波管軸方向長さをとれば、隔膜の破断形態に依らない衝撃波が得られることが分かり、隔膜式衝撃波管を用いた実験に対して有用なデータが得られた。
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