本研究では人文学・社会科学分野における研究の再現性問題の実態を論述の追跡可能性Traceabilityという観点から分析するため、分野横断的なアンケート、web調査、学会等での意見聴取を踏まえて分析した。その際に注目したのは、1)研究倫理審査という第三者目線のプロセスの介在が及ぼす影響、2)成果発表における合理的再構成である。1)については、医学・心理学系と他の人文・社会科学系の違いを定量的分析とともに検討した。2)の検討からは、人文・社会科学系の再現性問題は「研究における妥当な知識主張の構造とは」という認識論的かつメタサイエンス的な問いとして位置付け直すことが可能であることを明らかにした。
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