研究課題/領域番号 |
21K00036
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研究機関 | 会津大学 |
研究代表者 |
網谷 祐一 会津大学, コンピュータ理工学部, 上級准教授 (00643222)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 進化心理学 / 意識 / 発見法 / 方法論 |
研究実績の概要 |
交付申請書の研究計画欄では、本研究助成における三つのプロジェクト――(1) 意識の進化研究の方法論的吟味、(2) フェミニズムからの進化心理学への批判の検討、(3) 進化心理学などへの発見法からの擁護の検討――について記した。2021年度は主に(1)で具体的研究実績があったのでそれについて述べる。
(1)については “Do New Evolutionary Studies of Consciousness Face the Same Methodological Problems As Evolutionary Studies of Mind Do?”と題した講演をThe 9th Biennial Conference for the Asian-Pacific Philosophy of Science Association(2021年7月、オンライン)にて行い、「新しい意識の進化研究が進化心理学論争から学べること」と題した講演を科学基礎論学会秋の例会ワークショップ「動物意識の起源:心の科学と哲学の新展開」(2021年11月、オンライン)にて行った。いずれの発表でも聴衆と活発な質問・意見のやりとりが行われた。さらにこれらの講演に基づく論文をAnnals of the Japan Association for Philosophy of Science誌に投稿し、査読を経て採択された(未発行のため現時点では詳細を記載しない)。
また申請時の研究計画調書で述べた、人間の熟慮的思考プロセスの進化についての社会的能力(群れの他のメンバーと協力し出し抜かれないようにする能力)からの説明を批判する論文が査読を経て採択され、発行された(2021年4月、“Did Social Interactions Shape the Reflective Mind?,” 『科学哲学科学史研究』、15 号、1-24 頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(2021年度)の研究進捗状況は、上で記した三つの主な研究プロジェクトのうち第一で進展が見られたため、全体として順調に推移したと言える。以下個別のプロジェクトについて進捗状況を述べる。
(1) 意識の進化研究の方法論的吟味:「研究実績の概要」欄で述べたように、このプロジェクトは研究計画調書で記していた論文を国際学術誌に投稿し採択されたため当初の目的を概ね達成した。 (2) フェミニズムからの進化心理学への批判の検討:(1)のプロジェクトにめどがついた本年度後半はフェミニズムからの進化心理学への批判に関する文献を集中的に読み込み、それに基づく学会発表を構想した。 (3) 進化心理学などへの発見法からの擁護の検討:(2)と同時に文献検討を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画について、前述の三つのプロジェクトに沿って述べる。 (1) 意識の進化研究の方法論的吟味:先に述べたようにこのプロジェクトについては論文が出版され元々の目標を達成した。 (2) フェミニズムからの進化心理学への批判の検討:2022年度は前年度の研究に基づく学会発表を予定しており、すでにTokyo Forum for Analytic Philosophy(5月)および科学基礎論学会大会・講演会(6月)での発表が内定している。発表の後は国際誌への投稿を試みる予定である。 (3) 進化心理学などへの発見法からの擁護の検討:2022年度には、研究代表者は議論に必要な論文の調査を行い、議論をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2021年度は消耗品費などで20万円を計上していたが、図書購入や英文校正費などで16万円足らずの支出となった。さらに2022年度に研究代表者が海外・国内出張をする可能性があることを考慮すると、ある程度の予算を残しておくことが研究業務のスムーズな執行に不可欠であると判断し、それに配慮した予算執行になった。これが次年度使用額が生じた理由である。 (使用計画)「今後の研究の推進方策」で述べたように、2022年度は研究代表者が国内学会・研究会にて研究発表を行う予定である(ただし海外学会については、引き続きCOVID-19の状況をにらみつつ参加を模索する)。残余金額については消耗品や英文校正費などにて使用予定である。
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