| 研究実績の概要 |
交付申請書の研究計画欄では、本研究助成における三つのプロジェクト――(1) 意識の進化研究の方法論的吟味、(2) フェミニズムからの進化心理学への批判の検討、(3) 進化心理学などへの発見法からの擁護の検討――について記した。2023年度は主に(2)で具体的研究実績があったのでそれについて述べる。
(2)については、まず前年度国際学術誌に投稿した論文が採択され、"Finding Value-Ladenness in Evolutionary Psychology: Examining Nelson's Arguments"として公刊された（History and Philosophy of the Life Sciences, 45: 36. DOI: 10.1007/s40656-023-00590-7）。
また別のプロジェクトとして、科学者の振るまいを説明する二つの試み――科学知識の社会学者などが行ってきた利害要因から説明する試みと、フェミニスト科学哲学などが行ってきた男性中心主義的バイアスから説明する試み――を比較する研究について研究発表を行った。まず2023年6月に「社会的要因からの説明の諸相」と題した講演を科学基礎論学会（東海大学）にて行った。また7月には"When Interest-based Explanations Succeed"と題した講演をThe 10th Biennial Conference for the Asian-Pacific Philosophy of Science Association（Vin University, Vietnam）にて行い、さらに10月には同名の講演をPhilosophy of Science Around the World（オンライン）にて行った。いずれの発表でも聴衆と活発な質問・意見のやりとりが行われた。こうしたやりとりを元に草稿を再度検討して、最終的には論文草稿を国際学術誌に投稿した（審査中）。
|
