研究課題
基盤研究(C)
本課題では2000年代以降にアップデートされた「心の進化研究」を様々な形で検討した。具体的には、まず進化心理学への方法論的批判が意識の進化研究に当てはまるか検討し、後者による意識の説明には問題があるものの、進化心理学の仮説よりは批判に耐えることを明らかにした。またフェミニスト科学哲学者リン・ハンキンソン-ネルソンによる価値負荷性の観点からの進化心理学への批判を検討し、その議論の問題点を指摘する論文を出版した。
科学哲学
現代的な心の進化研究は1970年代にはじめて提起され、その方法論や理論の内実について激しい論争が行われてきた。しかし現在の心の進化研究はそこで議論された論点をある程度考慮したものになっている。本課題の成果の学術的意義は、そうした「成熟した」心の進化研究を検討して、なお残る問題点を指摘しつつ、性急な批判の問題点を指摘した点である。これによって、現在の心の進化研究に対してバランスのとれた評価を下すことが可能になった。