研究課題/領域番号 |
21K00049
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
根本 裕史 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (00735871)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中観思想 / 心の探究 / 修行理論 / ゲルク派 / カギュ派 |
研究実績の概要 |
本研究はインド・チベット仏教中観思想の展開を修行理論の視点から読み解き、思想史の再検討を試みるものである。この目的を達成するため、当該年度は次のことを実施した。 [1]基礎作業:ゲルク派の学僧クンタン・テンペードゥンメ(1762-1823)の『真実光明論』の「意識の探究」に関する節(ショル版26r-46v)の前半の翻訳研究を作成し、引用・言及されるカギュ派文献の特定と、その内容の精査を行った。特にインドの密教行者サラハの伝統を継承したカギュ派のガンポパ、ラマ・シャン、タクポ・タシ・ナムギェルなどの著作を精査し、彼らが説く「アマナシカーラ」と呼ばれる非分析的瞑想の理論の特色を把握すると共に、それに対するパンチェン・ロサン・チューギェンやクンタン・テンペードゥンメによるゲルク派側からの批判を検討し、両派の思想的相違を明らかにした。上記の作業に加え、本研究期間中の出版を目指している英文単著の準備を進めた。特に「否定対象」をめぐる議論や、中観思想における「恐怖の克服」をめぐる議論に関する論考二篇を完成させた。 [2]資料収集:中国・青海省やインド・カルナータカ州での現地調査を計画していたが、コロナ禍により実施を断念した。 [3]研究会の開催:崔境眞博士(東京大学)と定期的にオンライン研究会を実施した他、高橋晃一准教授(東京大学)や、ジャブ教授(青海師範大学)ともオンラインでの研究会を実施した。カギュ派・ゲルク派のマハームドラー思想の研究の世界的権威であるロジャー・ジャクソン教授(カールトン大学名誉教授)とオンライン会議やメールで情報・意見交換を行なった。 [4]研究成果の発信:広島大学比較論理学研究プロジェクトの雑誌『比較論理学研究』にジャブ教授との共著論文を発表した。ソウル大学で開催予定であった国際仏教学会(IABS)はコロナ禍により延期となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、中国やインドでの現地調査が実施できなかった。また、同じ理由により、国際学会での研究成果発信ができなかった。基礎作業は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
『真実光明論』の「意識の探究」の読解を継続し、基礎研究の充実を図る。オンライン会議の活用により、中国やインドの研究機関との連携を強化することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、中国・インドでの調査が実現できなかったこと、韓国ソウル大学での国際学会が延期になったことが理由である。本年度も海外での調査が実現できない場合には、広島大学に在籍するチベット出身留学生に、データ入力等の作業を依頼し、その謝金に充てることを計画している。
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