研究課題/領域番号 |
21K00049
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
根本 裕史 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (00735871)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中観思想 / 実践論 / マハームドラー / チベット仏教 / 静寂主義 |
研究実績の概要 |
大乗仏教で成立した中観思想を実践論の視点から読み解き、インド・チベット仏教思想史を再構築するという研究目的を達成するため、当該年度で計画していたのは、ゲルク派クンタン・テンペー・ドゥンメ作『真実光明論』の「意識の探究」節の解析、特に引用・言及されるカギュ派・サキャ派の文献の精査と関連資料の収集であった。そこで、特にガンポパの『マハームドラーの壺の真髄』(カギュ派)、タクポ・タシ・ナムギェルの『マハームドラー論』(カギュ派)、タクパ・ギェルツェンの『道果説黄色本』(サキャ派)などを精査し、彼らの修行理論に共通の要素を見出した。すなわち、未来から現在、過去へと移りゆく意識の流れを観察してその把握不可能性を認識した後、分析的知が自ずと停止することをもって真実義の証得、法身の立ち現れを実現させようとする点である。彼らの修行理論の根幹をなす静寂主義的思考を批判したゲルク派の祖ツォンカパと彼の弟子ケードゥプジェは、分析的知を維持しながら「実在性の排除」あるいは「不在」として知られる真実義という認識対象に意識を定め、徐々に無分別智を獲得することを目指した独自の理論を展開する。
上記の研究成果の内、カギュ派・ゲルク派の「意識の分析」に関する考察を国際チベット学会(チェコ・カレル大学、オンライン、2022年7月)で発表した。さらに、チベット仏教における「不在」の概念と、それに付随する「非在」の概念について得られた新たな知見を日本印度学仏教学会(東京外国語大学、オンライン、2022年9月)で発表し、その発表内容に基づき『印度学仏教学研究』に"Revisiting the Tibetan Concepts of med dgag and ma yin dgag"と題する論文を寄稿した。本研究全体を「精神修養」という視点から俯瞰した論文「精神修養としての中観哲学」を『比較論理学研究』に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた国際チベット学会での発表に加え、日本印度学仏教学会での発表と、二篇の論文投稿を達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き『真実光明論』の「意識の探究」節の精査を継続する。コロナ禍で実現できなかった国内外の研究者との研究会を実施する。また、英文単著出版の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、チェコで開催された国際学会にオンラインで参加したため、次年度使用額が発生した。翌年度は国内外で開催される研究会への対面参加等を計画している。
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