研究課題/領域番号 |
21K00118
|
研究機関 | 東京音楽大学 |
研究代表者 |
下道 郁子 東京音楽大学, 音楽学部, 准教授 (50421110)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 旧制高等学校 / 応援歌 / 唱歌教育 / ジェンダー教育 / 音楽文化史 / 学校文化資源 |
研究実績の概要 |
本研究は明治大正期における応援歌を検討することにより、この時期の西洋音楽文化の受容とその変容を再検討するものである。特に旧制高等学校の運動部の応援歌の形成過程の検討を通して、日本人が西洋式の集団歌唱をどのように受容し、日本の文化と融合しながら変容していったのかを明らかにすることを目的とする。2021年度は明治時代を中心に、主に以下のように進めた。 1 学校文化資源の収集と分析:一高、二高、三高、札幌農学校の運動会、学内学外対抗試合、応援団、運動部など、応援歌の背景の解明に関する学校発行・所在の資料を集めた。既に本研究者が所有している各学校発行の歌集を用いて「 応援歌」の類別を行った。当初の予測に反して、応援歌は運動部の対抗試合だけでなく、例えば体育を重視した二高では学科(「文科」「農科」「医科」)の対抗試合のためにも作成され歌われ、生徒間の融和団結の教育の要となっていた。取材による映像資料等の収集は、コロナのため中止となった。 2 応援歌の背景調査:コロナのため、行事への参加や、関係者への取材は行わず、資料による文献調査のみを行った。「応援歌の始まり→伝播→変容と批判→応援の激化・声援隊から応援団という用語への変化」の過程を明らかにした。 3 集団歌唱の教育効果として求められた国民形成のうち、特に当時の男性国民像について、旧制高等学校の前身である高等中学校の唱歌教材の歌集『中等唱歌集』の分析から明らかにした。明治期の唱歌教育が担ったジェンダー教育が、応援歌の発展に影響したと考えられた。 以上の1と2の成果は音楽教育史学会誌の査読論文として発表した。3の成果は本研究者の勤務校の博士課程の共同研究の報告書において、研究ノートとして発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響で寮歌祭が中止となり、対面によるインタビューや取材の機会を持てなかったことが大きな理由である。博物館、記念館、図書館などの入館制限や、展示の中止なども遅れの要因となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、①「応援歌の楽曲分析」と②「応援歌の背景の調査」を行う一方で、応援歌の背景調査のうち、特に今年度実施できなかった実践現場への参加や関連人物へのインタビューによる取材などを積極的に行う。当初予定していた7月にオーストラリアのブリスベンで開催される国際学会International Society for Music Educationは、コロナの為にZoom開催となったこと、研究の進捗が遅れたこと等から、発表の応募は見合わせたので参加しない。11月には国内学会での口頭発表を予定している。また査読付き学会誌に中間成果を論文として投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナのため、博物館、資料館、各大学の図書館に赴いて、必要な資料の調査ができなかったこと、寮歌祭等の行事が中止になり取材ができなかったこと等から、助成金の多くを翌年度に繰り越すこととなった。2022年度は、国際学会参加の為の旅費は必要なくなったが、国内出張による調査、行事への参加や取材を積極的に行い、助成金を使用する予定である。今年度購入予定のPC一式の購入が遅れたため、PC購入費用が翌年度の決済となっている。
|