研究課題/領域番号 |
21K00281
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小川 陽子 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (50512266)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 物語目録 / 黒川春村 / 古物語類字鈔 / 中世王朝物語 / 作り物語 |
研究実績の概要 |
本研究は、黒川春村『古物語類字鈔』を主たる研究対象とし、同書と春村前後の物語研究とを比較検討することにより、【Ⅰ.近世後期における中世王朝物語研究の実態】と【Ⅱ.Ⅰの明治期における国文学研究への継承・展開】について明らかにすることを目的とする。本年度はⅠを中心課題とし、主として(1)資料収集、(2)黒川春村の相対化の2点に取り組んだ。 (1)資料収集 近世後期に作成された物語目録の残存状況について改めて確認し、未収集の資料について可能なかぎり紙焼き写真もしくは電子データを収集した。特に下記資料について新たに存在を把握し、本文を収集できたのは、大きな収穫であった。これに加えて茨城大学図書館本も所在確認済みであるが、現地での閲覧・撮影が必要なため、コロナ禍が落ち着いてから出張する心づもりである。 『古話篇目』東北大学図書館本、『物語書目備考』慶應義塾大学図書館本(国書総目録にて「幸田成友」蔵と記載されているもの)、『物語書目備考』国文学研究資料館鉄心斎文庫本、『物語書目備考』東海大学図書館桃園文庫本、『物語書目備考』正宗文庫本 (2)黒川春村の相対化 『古物語類字鈔』における「つくりものがたり」という語の使用について、物語享受史における位置付けを明らかにした(EAJSにて口頭発表し、論文化した。次年度刊行の論集に収載予定)。また、ノートルダム清心女子大学図書館蔵『蜑刈藻物語系図年立/石清水物語系図』について、『源氏物語』注釈や近世後期の索引類ならびに物語目録類との関係を明らかにした。さらに、物語目録の残存状況を確認する過程で新たに近世後期の『石清水物語』享受資料を発見したため、春村の研究と比較対象すべく、研究中である(次年度の論文化を目指す)。 このほか、8種の物語目録について、立項された物語名のデータ化を行い、目録間の異同および目録の増補成長を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により十分な出張調査ができなかったが、紙焼き写真および電子データによる資料収集が進展し、物語目録の記述内容については研究計画立案段階で想定していた以上に幅広く現存諸本を確認できるようになった。また、研究の過程で新たに『石清水物語』享受資料を発掘しえたのは大きな収穫であった。さらに、オンラインでの学会・研究会へ積極的に参加し、情報交換を行うことができた。よって、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度後半は隣県の愛知・三重への出張調査を実施し、新たな資料を発掘できた。次年度も東海近郊を中心に、可能なかぎり文献調査を行う。コロナ感染拡大状況によっては調査が十分に行えないことも予想されるため、その場合は、本年度に収集した資料の翻刻・整理および研究を行うとともに、春村も関与していたことが明らかな近世後期の索引類について、公刊された影印および各地の研究機関によって公開されているデータを中心として情報整理し、研究していく。 また、本年度の研究によって新たに発掘しえた『石清水物語』享受資料について、関係する周辺資料を調査し、物語享受史における位置付けをはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張調査が十分に行えず、計上していた国内旅費が大幅に余った。また、調査結果に伴って新たに必要となると見込まれる書籍の購入費も予算計上していたため、調査の中止により残額が生じた。次年度も引き続き出張が十分に行えない状況が予想される。一方、本年度末に近世および明治期の奥書を有する『雲隠六帖』の写本が新たに出現し、近世から明治にかけての中世王朝物語享受史の一端を解明しうる資料と見込まれるため、その入手費用に次年度使用額を充てることとしたい。
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