研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,朝鮮語においてどのような言語表現が相手を不快にさせるのかを明らかにするところにある。2023年度は主に1)命令形終結語尾-e, -ela,2)分析的形式-l kesi anitaに関する考察を行った。 1) 2021年から調査を進めてきた朝鮮語の命令形終結語尾-e,-elaについて,具体的な分析と考察に取りかかった。-e,-elaはともに非丁寧体の形式であり,-elaが最も低い待遇レベルに属する。しかし,-elaを使用しても-eを使用しても,命令の強制力に違いが現れることはない。また,日本語の命令形と同様に,朝鮮語の命令形-e,-elaも必ず命令を表すわけではない(例:この狭い店にお客が押し寄せてみろ。どうやって乗り切るんだよ)。以上を踏まえて,まず-e,-elaを使った発話が行為要求を表すか,表さないかに分けて,それぞれの意味を記述した。次に,同一の話し手が同一の聞き手に対して両形態を混用する発話を抽出し,上位者から下位者,同等の関係に分け,-elaを使った発話にどのような特徴が見られるのかを調べた。 2) 2022年度に行った-nyakoに関する考察の中で,分析的形式である-l kesi anitaの使用と不快感が関連している可能性を指摘してきた。今年度は例文を通して,不快感との関連性を言及する予定であった。しかし,-l kesi anitaに関する先行研究がほとんど見当たらず,この形式がどのような状況で使用されるのかが明らかではなかった。そこで,具体的な用法を探るべく考察を進め,特徴的な用法を指摘できた。今後,この結果を用いて不快感との関連性に言及する予定である。 1), 2)で得られた結果は論文化した。
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