研究課題/領域番号 |
21K00574
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
小林 亮一朗 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (80824143)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 主要部移動 / 主要部後続型 / 統辞論 / 意味論 / 生成文法 / Verb-echo answers / Null adjuncts |
研究実績の概要 |
初年度は計画通り、「等位接続文における主要部移動分析の再検討」に着手した。主要部移動には通常、作用域関係を変化させるような意味的な効果が無いとされている。しかし、Lechner (2006)他は意味的な効果を持つ主要部移動が存在することを指摘している。これを踏まえ、(1)のような日本語における非構成素等位接続について、主要部と数量詞の作用域関係を観察することで、Koizumi (2000)他の分析に反論を提供した。この成果を論文としてまとめ、現在は出版に向けた準備を行っている。 (1) [マリーがビルに本を2冊]と[アンがジョンにペンを3本]あげた。 本研究は予定よりも順調に進んでおり、2年目に予定していた「「空付加詞読み」テストの妥当性再検討」についても、初年度に研究を開始することができた。日本語における主要部移動の有力な証拠とされている「空付加詞読み」について語用論的な分析を行い、その成果の一部を国際学会で発表した。 さらに「空付加詞読み」についての批判的検証を行う中で、Sato and Maeda (2021)他のverb-echo answers(VEAs)の分析に対して、主要部移動を仮定しない分析を反論として提案することができた。VEAsは(2A)のように疑問文((2Q))への応答であり、省略現象の一種として扱われている。 (2)Q: ジョンは夕飯を食べましたか? A: 食べましたよ。 動詞の時制辞への移動を想定せず、主語、目的語、付加詞などの要素について、独立に省略することでVEAsは派生されるという「非移動分析」を提案した。この成果については既に国際学会で発表をしており、今後も引き続き、分析の精緻化と論文としての出版を目指し、研究に取り組んでいく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、初年度は「研究実績の概要」に記載の通り、[1]「等位接続文における主要部移動分析の再検討」のみに取り組む予定であった。しかし、当初の計画よりも順調に研究が進んでいることから、2年目の予定を前倒しし、[2]「「空付加詞読み」テストの妥当性再検討」についても着手した。これらの研究成果について、the Penn Linguistics Conference (PLC) 46(COVID-19の影響でオンライン(Zoom)開催)にて、研究発表(共著)を行った。 なお2年目以降にもし進捗の遅れが生じた場合は、研究計画書に記載の通り、[3]「主要部移動による作用域変化の議論についての妥当性再検討」と[4]「日本語における主要部移動分析に対する代案の提示」に集中して取り組み、中核となる課題の達成に向けた調整を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は1年目に引き続き、[2]「「空付加詞読み」テストの妥当性再検討」について研究を進める予定である。それに加えて、進捗の状況によっては臨機応変に計画に修正を加え、[3]「主要部移動による作用域変化の議論についての妥当性再検討」についても着手したいと考えている。 (3)の「空付加詞読み」は、長らく動詞の主要部移動を想定する、動詞残留省略の証拠として扱われてきた(Funakoshi 2016他)。 (3) ビルは車を丁寧に洗った。ジョンは洗わなかった。(Oku 1998) (3)の後続文において、付加詞「丁寧に」は解釈に含まれないとされている。本研究では、文脈を正しく設定することによって、付加詞が省略できる場合も存在するのだということを指摘した(Tanabe and Kobayashi 2022)。今後は付加詞が独立に削除されうるというadjunct ellipsis分析の可能性について検討をし、分析の提案を目指す。上記に加えて、引き続き[1]の成果を出版するための準備も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、参加を予定していた国際学会(北米、ヨーロッパなど)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって、オンライン開催となったためである。2022年度も海外での国際学会への対面参加は難しいと考えられる。そのため、次年度使用額については、論文や学術図書の出版費用などに使用したいと考えている。
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