• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

日本大衆文化の開放が韓国の日本語教育に及ぼした影響

研究課題

研究課題/領域番号 21K00606
研究機関国士舘大学

研究代表者

河先 俊子  国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (60386927)

研究分担者 青柳 寛  国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (40338299)
呉 正培  尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (60510568)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード日本大衆文化 / 韓国の日本語教育 / 異文化接触 / 日韓関係
研究実績の概要

2022年度に韓国の高校・大学で日本語関連科目を担当する韓国人教師を対象として実施したインタビューを、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析し、韓国人日本語教師が日本大衆文化をどのように受容し、どのように授業で使用しているのか示した。そして、大衆文化を、消費を通した意味生成の場とみなし、組み込みと抵抗によって特徴づけられるプロセスに注目して考察した。分析の結果、韓国人日本語教師にとって日本大衆文化は、教育内容を学習者に同意させ、学習を促進させるためのツールとなっている一方で、教師中心の伝統的な教育観、韓国の対立を煽るような政治勢力に抵抗するためのツールにもなっていることを指摘した。また、日本大衆文化は、韓日両社会のヘゲモニックな文化が対立する場にもなっていたが、それに対して韓国人日本語教師は、日本大衆文化を韓国の主流文化との適合性と必要性に鑑みて排除したり調整したりしながら使用し、学習者を文化相対主義的な日本理解に導こうとしていることが分かった。そして、日本大衆文化は、日本語学習の価値を高め、韓国社会に根を下ろしている対日偏見に抵抗しようとする教師をエンパワーメントする有効な道具の一つとして機能していると考察した。
上のインタビューでは20代、30代の若手教師のデータが不足していたため、追加的なインタビューを実施して日本大衆文化が開放される前に学生だった教員と開放後に学生だった教員とを比較し、後者の方が、日本大衆文化によってセルフエンパワメントされたり、行動を方向づけられたりする傾向が強いという示唆を得た。
更に、2024年度実施予定の質問紙調査の予備調査として、韓国の高校・大学で日本語を学ぶ学生13人を対象としてグループ・インタビューを実施し、日本大衆文化の視聴経験やアイデンティティとの関係、ファン・コミュニティーの実態などに関する情報を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2022年度の夏からインタビュー調査と教育機関の訪問調査を開始する予定だったが、パンデミックの影響で訪韓できず、半年ほどスタートが遅れてしまった。その結果、その後の分析と結果の公表も半年程度、遅れている。現在、当初の計画に追いつくべく、鋭意努力中である。

今後の研究の推進方策

今年度(2024年度)は以下の3件を実施する予定である。
1.韓国の高校・大学で日本語を学ぶ学習者を対象とした大規模な質問紙調査(2024年9月実施予定)と一次的分析:質問紙では日本大衆文化の視聴実態と日本大衆文化に対する認識、アイデンティティとの関係、日本語学習時の活用法などを尋ねる。これに先立って、研究会を2、3回程度実施し、質問紙を作成する。得られたデータの一次的な分析では、日本大衆文化のファンと非ファンの間で、日本語学習への取り組み方、日本に対する態度、韓日関係に対する認識、日本大衆文化およびそのファンに対する評価などに違いがあるかどうか検討する。また、大衆文化の日本語と教科書や授業の日本語との違いに対する認識も明らかにする。これらの分析を通して、日本大衆文化が韓国人の日本語学習に及ぼしている影響を考察すると同時に、韓国社会にもたらしている影響についても検討したい。さらに、高等学校の日本語科の教育課程が繰り返し主張する日本語教育を通した良好な韓日関係の構築・維持が実現されているかどうか、日本大衆文化はそこに貢献しているのかといった問いへの回答も探りたい。
2.韓国人日本語教師に対するインタビュー・データの分析:日本大衆文化開放後、学生だった比較的若手の教員と、開放前に学生だった教員とを比較して分析し、日本大衆文化開放の影響について考察する。
3.韓国人日本語学習者に対する追加的インタビュー調査の実施とデータの分析:日本大衆文化のアイデンティフィケーションへの影響とファンの共同体の形成を中心として分析する。
2025年は、質問紙調査の分析結果を公表して、研究全体の総まとめを行い、次の研究計画を立てる予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究分担者による支出がなかったこと、インタビュー調査開始が半年遅れたのに伴い、書き起こしも半年遅れていることが主な理由である。次年度使用額はインタビュー・データの書き起こしのための人件費および研究分担者の旅費として使用したい。また、助成金は質問紙調査のための旅費、追加のインタビュー調査のための謝金、書籍購入、分析ソフトの購入などに使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 韓国人日本語教師による日本大衆文化使用の実態調査ー組み込みと抵抗の場としての日本大衆文化ー2023

    • 著者名/発表者名
      河先俊子
    • 雑誌名

      21世紀アジア学研究

      巻: 22 ページ: 67, 84

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 日本語学習に観るクールジャパン効果について:韓国の高等学校の事例から(国際アーツ&パフォーマンス探究分野開拓への示唆の試み)2023

    • 著者名/発表者名
      青柳寛
    • 学会等名
      明治学院大学国際学部付属研究所 2023年度第1回フォーラム

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi