今年度の研究ではOG方法に基づく英単語学習における触覚感覚の効果に焦点を当てた。目標は、スタイラスペンのような「手書きスタイルのデバイス」を使用して学習効果を高める可能性を探求であった。文字の認識とそれらの文字を書くために必要な指の微細な運動技能を含む「書く」という行為は、身体的な自覚に繋がる手の動きの経験が重要である。この身体知を構築するためには、何を学ぶかだけでなく、どのように学ぶかも重要である。英国のディスレクシア協会は、視覚的、聴覚的、および運動・触覚的を含む3つの主要な学習スタイルを提案しているが、日本では、英語教育が主に視覚的・聴覚的アプローチに依存しており、運動・触覚的観点が不足している点に注視した。 読み書きにおける運動感覚と触覚の効果を探求し、通常の授業では、用いれる学習ツールの使用を現実的に提案しようと考案してきた結果、触覚/運動感覚アプローチとICTの使用との統合を考える必要があるという認識に至った。その中で着目したのが、スタイラスペンの使用である。リアルな手書き感覚を再現し、学習効果の可能性を探求した。過去の研究で、紙への手書きとタイピング入力を比較スタイラスペンを使用することで認知負荷が増加するが、慣れと使用法の工夫によって効果的な学習方法を見出すことがわかっている。そこで英単語の学習におけるスタイラスペンの可能性を探った。学習者の英単語学習ストラテジーやスタイラスペンの使用状況に関する情報を収集した。その結果、最も多くの英語学習者が従来の紙に書くこと、見ることで英単語学習を行い、次に多いのは指で単語を書くという学習方法であった。そして単に目で英単語を追うのは学習方法として効率が悪いということもわかった。一方でスタイラスペンはメモに使うのみで英単語学習に効果的に活用されていないことがわかり、初期学習者で実用的に使用する有効性の可能性を示唆した。
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