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2021 年度 実施状況報告書

海と陸から問い直すアメリカ現代史―20世紀後半ニュージャージー州沿岸諸都市の変容

研究課題

研究課題/領域番号 21K00935
研究機関専修大学

研究代表者

南 修平  専修大学, 文学部, 准教授 (30714456)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードアメリカ史 / 海事史 / 労働史 / 第2次世界大戦 / 冷戦 / 海員労組
研究実績の概要

本研究は海が諸国家間の激しい覇権争いの場となった20世紀後半のアメリカ・ニュージャージー州沿岸諸都市の変容を海と陸の双方から考察し、公権力による海事政策の強化が、沿岸諸都市に暮らす人々の日常にいかなる影響を与えたかを読み解くものである。そのために主となる作業は、①20世紀アメリカ海事政策、②海員の生活世界を明らかにし、適宜③ニュージャージー州沿岸諸都市に関する史資料調査を進めることである。
2021年度は①と②に関して進展を見た。具体的には、国家の海事政策がかつてないほど強まる第2次世界大戦期の推移を整理するとともに、その中で重要な役割を担ったアメリカ海員労組の状況や、海員の日常生活における変化を分析した。この作業を通じて、アメリカ海員は戦時中に米海軍の補助部隊として戦線に動員されたことで多大な犠牲を払いつつ、戦後には「国家への貢献」を根拠にその地位を向上させ、日常生活においては陸上の生活を重視するミドルクラス志向を強めたことを明らかにした。
こうした海員のミドルクラス志向は、当時他のブルーカラー部門の白人労働者の多くに見られた現象であり、より大きな歴史的文脈において考察する必要がある。そこで、2021年度では白人労働者の歴史とその形成に関する研究も進め、学会報告や論集への寄稿によって理論的な整理を行った。
海員の日常生活をさらに詳細に見ていくためには、③の史資料調査が不可欠となる。しかし、2021年度も依然コロナウイルスによる渡航制限が続いたため、見送らざるを得なかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

史資料調査を見送った一方で、これまでに収集してきた史資料の分析に注力した結果、第2次世界大戦が海事政策に与えた影響や、その中で海員自身の社会的地位と日常生活が大きく変わっていくことが実証的に明らかにできたからである。
また、調査を見送った結果、アメリカの白人労働者階級の歴史に関する理論的整理に時間を割くことになったが、海員をその中に位置づけることで、戦後の海員労組の動向やそれに伴う海員の日常的関心の変化がよりクリアに見えてきたことも一つの成果であった。

今後の研究の推進方策

2022年度の中心課題は引き続き①20世紀アメリカ海事政策、②海員の生活世界、③ニュージャージー州沿岸諸都市に関する史資料調査の3つで構成される。①については、考察する時代を冷戦期に移す。特に海事政策や海運産業に対してアメリカのみならず世界規模で多大な影響をもたらした便宜置籍船問題を主要な考察対象に設定し、まずその歴史や諸影響についての概要を把握する。②はこれまでに収集したアメリカ海員労組の史料分析の継続と、③の再開によって、より詳細に第2次世界大戦後の変化を明らかにする。③の調査は渡航先での作業が問題なく行えるという目途がつき次第実施したい。特に、海員労組に関する史料の一部が未収集のままになっているコロンビア大学図書館での作業は年度内に終えることが重要となる。その後はすでに着手し始めているニュージャージー州沿岸諸都市の形成と変化に関連するコミュニティ史資料の収集に注力していく。それらは主に地域の公立図書館で行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していたニュージャージー州などでの史資料調査がコロナウイルスの影響でキャンセルとなり、そのための旅費が次年度以降に使用するものとなったことによる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 海から陸の男へ―第2次大戦後におけるアメリカ人海員の「家族人」志向2021

    • 著者名/発表者名
      南修平
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 1016号 ページ: 59-70

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 特集にあたって2021

    • 著者名/発表者名
      南修平
    • 雑誌名

      大原社会問題研究所雑誌

      巻: 761号 ページ: 1-3

  • [学会発表] 研究者としての野村達朗―21世紀の労働民衆史を展望する2021

    • 著者名/発表者名
      南修平
    • 学会等名
      名古屋アメリカ研究会第234回例会(野村達朗さん追悼例会)
    • 招待講演
  • [図書] 歴史で読むアメリカ:「第2章 歴史の中の白人労働者―「働くアメリカ人」の矜持」(南修平)2022

    • 著者名/発表者名
      町田哲司編
    • 総ページ数
      163
    • 出版者
      大阪教育図書
    • ISBN
      9784271410287

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公開日: 2022-12-28  

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