研究課題/領域番号 |
21K01041
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
梅田 克樹 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20344533)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 酪農 / 災害レジリエンス / 社会関係資本 / 停電 / 高温少雨 / 北海道 / 栃木県那須地域 / ニュージーランド |
研究実績の概要 |
研究初年度にあたる令和3年度は、コロナ禍による影響を色濃く受けた。 春季(2~3月)に予定していたニュージーランド調査(おもに文献・資料の収集)は、現地入国制限が解除されなかったため令和4年度以降に先延ばしせざるを得なかった。このため、ニュージーランド関連の文献・資料の収集は、国内機関やオンラインによって可能な範囲において実施した。ただ、現地に赴くことなく収集可能な文献・資料はどうしても限られてしまううえ、聞き取り調査も実施できないなど、計画通りに研究を遂行できたとは言いがたい状況である。 北海道における調査は、夏季(7~8月)に実施した。ただし、8月2~26日にまん延防止等重点措置が、8月27~9月30日に緊急事態宣言が、それぞれ北海道に発出された。そのため、対面による聞き取り調査は、ごく限られた範囲でしか実施できなかった。その一方、令和3年夏の北海道は、観測史上初となる15日間連続の猛暑日(最高気温35度以上)を記録するなど、異常高温に見舞われた。降水量も著しく少なかったため、飼料作物や牧草の生育に大きな支障が出たほか、乳量減少や受胎率低下などの被害が多発した。まさに災害級の異常気象であり、その被害状況の把握に努めた。おもに羊蹄山麓をフィールドとして被害発生状況を調査するとともに、気象データの収集・分析をおこなった。また、2018年夏の停電災害について、可能な範囲で文献・資料の収集を実施した。 栃木県那須地域についても、コロナ禍による移動制限等のため、現地調査は限定的(3月に一度)しかできなかった。可能な範囲で文献・資料の収集を実施した。 以上のように本年度は、現地調査に制約がある中で、停電や異常気象による酪農地域・経営の被災状況の概括的把握に努めた。これらは、酪農地域・経営の災害レジリエンスを検討するための前提となる重要な情報として活用できるものと期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所期の令和3年度計画では、文献・資料の収集および行政・農協・地域リーダー等への聞き取り等を予定していた。しかし、コロナ禍による移動制限のため、ニュージーランド現地調査は中止(令和4年度以降に先延ばし)となり、国内調査(北海道・栃木県那須地域・千葉県)も限定的にしか実施できなかった。そのため、前者(文献・資料の収集)については一部実施できたものの、後者(行政・農協・地域リーダー等への聞き取り等)はほとんど実施できなかった。令和3年度に実施できなかった調査等については、令和4年度に先送りして実施する計画である。所期計画に比べると、進捗状況はやや遅れ気味である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、コロナ禍による移動制限の順次緩和が見込まれる。 夏(9月)または冬(11~1月)にNZ調査を実施予定である。まずは、現地での文献・資料の収集を通じて、被災状況の概括的把握に努めたい。また、令和5年度以降の調査に向けて、キーパーソンとのコネクション構築を模索したい。 北海道と千葉県についても、令和3年度に積み残した文献調査とともに、第一段階の聞き取り調査を実施したい。北海道においては、ブラックアウト発生後における停電対策(自家発電・配電盤の準備など)の実施状況や、停電対策に対する国の補助事業の効果、BCP(事業継続計画)の策定状況に注目する。また、原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーへの移行が必ずしも順調に進まない中で、ブラックアウトの再発が強く懸念される状況になっている。ソフト面の対策を含めて、どのような停電災害対策を構築しているのかを調べたい。 栃木県那須地域においては、除染対象牧草地の状況と酪農経営動向との関連について調査を進めたい。ただ、他事例とは対象が異なることから、調査の優先度については要検討であろう。 いずれの地域も、令和3年夏の高温少雨によって酪農地域・経営は深刻な打撃を受けた。NZにおいては、過去9年連続で平均気温が高い状態が続いており、特に令和3年夏は平年を0.95度も上回る記録的な酷暑であった。北海道や関東地方も記録的な暑さに見舞われた。このような高温状態の恒常化は、元来涼しい環境を好む牛にとって、脅威と言える状況である。また、飼料作物や牧草の生育状況が変化しており、特に少雨化による収量低下の影響は大きい。ハード面の対策によってリスク低減を図りうる停電災害に比べても、高温少雨化に適切に対応することには、酪農技術体系の再構築を含む相当の困難が伴うものと考えられる。酪農が継続的に直面する災害として、高温少雨化の問題も調査対象に含めることとしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所期の令和3年度計画では、文献・資料の収集および行政・農協・地域リーダー等への聞き取り等のため、現地調査の実施を予定していた。しかし、コロナ禍による現地入国制限のため、ニュージーランド調査は実施できなかった。令和4年度以降に先延ばしせざるを得ない。また、緊急事態措置・まん延防止等重点措置が断続的に発令され、都道府県界を越えた移動や対面での調査が困難な状況が断続的に続いた。国内調査(北海道・栃木県那須地域・千葉県)も限定的にしか実施できなかった。その結果、本年度は旅費を支出しなかったたため、次年度使用額が生じることとなった。
|