研究課題/領域番号 |
21K01041
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
梅田 克樹 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20344533)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 災害レジリエンス / 高温少雨 / 飼料高騰 / 北海道 / ニュージーランド / 社会関係資本 |
研究実績の概要 |
研究3年目である令和5年度は、コロナ禍による影響はほぼ収束した。 ただ、当初予定していたニュージーランド調査は、コロナ禍中に滞留していた他の渡航計画等もあり、日程的な支障から令和5年度中には実施できなかった。令和6年5月に現地調査を実施したうえで、令和6年度中にもう一度、また令和7年度中のフィールドワーク実施を計画している。そのため、令和5年度中のニュージーランド関連の研究は、国内機関やオンラインによって可能な範囲において文献・資料を収集し、分析を実施した。しかし、現地調査をせずに得られる情報には限りがあり、計画通りに研究を遂行できたとは言いがたい状況である。 国内における調査は、前年に引き続いて8月に実施した。温暖化の影響による夏季の高温少雨が恒常化している近年の中でも、令和5年夏の状況は特に顕著であった。夏季の全道平均気温が平年を3.17℃も上回り、観測史上最高を記録した。食欲減退や乳量減少など、牛体への負荷に起因するとみられる現象が観察された。また、道北を除いて少雨傾向も継続し、牧草・飼料価格の育成にも影響を及ぼした。輸入飼料やエネルギー等の価格高騰や、子牛価格の低迷も、酪農経営を圧迫した。離農率の上昇が止まらず、生産基盤の弱体化が加速している状況である。このような災害級とも言える状況に対して、集団的・個別的対応のあり方とその効果について、主に道央地域において聞き取り調査を実施した。 つい数年前までは、災害級の高温多雨に見舞われていなかった。大規模化・機械化の進捗と乳価の引き上げによって、十分に再生産可能な経営環境が実現されていた。ここ数年の環境変化は事前に予測できるものではなく、現在は応急的な対応に追われている状況である。しかし、この応急的対応のあり方こそが、今後の各地域・経営における酪農の運命を左右するかもしれない。そこで、現地調査の積み重ねを最優先したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ニュージーランド調査において遅れがみられる。令和4年度に続いて、現地調査を実施できなかったためである。コロナ禍で積み残していた渡航計画等を消化するため、年度中に6回の海外渡航を実施した。そのため、日程面でニュージーランド調査が困難になり。令和6年度に実施を先延ばしした。 国内調査については、令和4年度までのコロナ禍による遅延の影響は残っているものの、おおむね軌道に乗っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、現地調査の実施に注力したい。 ニュージーランド調査については、5月上~中旬にかけて実施する。北島(特にワイカト地域)において、資料収集・農場調査ならびにキーパーソンとのコネクション構築に取り組む。また、2月上~中旬にかけて、北島(特にマナワツ・ワンガヌイ地域)および南島(特にカンタベリー地域)において、本年度2回目の調査を予定している。 国内調査については、随時継続して実施したい。特に、夏季(7月下旬~8月中旬)に集中的に取り組むことを計画している。 なお、コロナ禍による1~2年目の調査困難およびニュージーランド調査の遅れが生じているため、研究期間を1年延ばすことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
所期の令和3~5年度計画では、ニュージーランド調査を計3回実施する予定だった。これらを、令和6年度以降に先延ばしすることとした。また、各年とも夏季(7~8月)に1カ月程度、北海道に滞在し、期間中に調査を実施してきた。さまざまな用務等が混じった滞在であるため、本研究経費から国内旅費として支出することは見合わせた。これらの理由から、当該年度の旅費支出を一切せず、次年度使用額が生じる結果となった。 研究期間を令和7年度まで延ばし、令和6年度および7年度に各2回のニュージーランド調査を実施する計画である。そのための経費に見合う金額が、次年度使用額とおおむね一致する。
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