研究課題/領域番号 |
21K01080
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
深田 淳太郎 三重大学, 人文学部, 准教授 (70643104)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 貨幣 / 負債 / 原初的負債論 / キャッシュレス決済 / 貝殻貨幣 |
研究実績の概要 |
モノとしての貨幣の受け渡しを伴わない形での貨幣を用いた交換システムがどのように成立するのかについて、「負債」という観点から考察を行なった。 特に注目したのが、オルレアン&アグリエッタが『貨幣主権論』(2012)において貨幣の起源として唱えた「原初的負債論」である。原初的負債論では、人間はこの社会において生きていく上で神や世界に原初的に負債を負っているものとする観念が世界中に見られることから、その負債を支払うためのものとして貨幣が誕生したとする議論である。これは、主流の学説である、貨幣商品起源論(欲望の二重の一致の困難を解消するための商品として貨幣がはじまったとする説)を批判するものである。 商品という、それ自体が価値を帯びているものではなく、負債という交換主体間の「関係」に貨幣のはじまりを見るこの議論は、モノとしての貨幣を使わないキャッシュレス決済を考える上できわめて興味深い。この議論の立場からパプアニューギニア、トーライ社会において使われている貝殻貨幣タブの価値のあり方、および現在のキャッシュレス決済を捉え直すことは今後の研究を進めていく上できわめて有効であるという観点である。 実際、フィールドワークを通してこの点について調査を進めようと考えていたが、2021年度はコロナウイルス感染の拡大状況からパプアニューギニアへの渡航は結局果たすことが出来ず、文献研究にとどまった。来年以降、フィールド調査に基づく研究を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はコロナウイルス感染の世界的拡大の影響により、パプアニューギニアへの渡航が不可能であった。できる限り、文献研究を進めたが、本プロジェクトを進めていくためにはフィールド調査が欠かせない。そのため考えていた予定よりも研究の進捗状況はやや遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は夏期にパプアニューギニアでのフィールド調査を実施予定である。一ヶ月ほど現地に滞在し、現地社会における貝殻貨幣の使い方について、その中でも特にモノとしての貨幣の受け渡しを伴わないやり方での使い方についてデータ収集を実施する。 また同時に、キャッシュレス決済についての文献研究を進めていく。特に暗号資産ビットコインの成立の経緯についての先行研究を調査し、従来のオルタナティブ貨幣とどのような点において異なっており、どのような点において同じであるのかを明らかにする。さらに、近年注目されている、デジタル技術を用いた地域通貨実践についても調査を進めていく予定である。 なお、コロナウイルス感染状況によっては今年度もパプアニューギニアでの調査実施が不可能である可能性もある。その場合には、国内のデジタル技術を使った地域通貨について、フィールド調査を実施することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染状況の悪化により、予定していたパプアニューギニアでのフィールドワークを実施することが出来なかったため、旅費として出費するはずの予算を出費しなかった。その分は今年度以降の調査期間をできる限り長く取るために使う予定である。
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