研究課題/領域番号 |
21K01157
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
篠原 永明 甲南大学, 法学部, 准教授 (70734648)
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研究分担者 |
吉原 知志 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (70805308)
堀澤 明生 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (90647439)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マンション / 区分所有法 / マンション建替え円滑化法 / 憲法学 / 行政法学 / 民法学 / 建替え決議制度 / マンション敷地売却制度 |
研究実績の概要 |
本研究は、憲法学、行政法学、民法学の3分野の専攻者が共同することによって、現在のマンション法制の体系を明らかにするとともに、特にマンションの建替えや、敷地売却などの区分所有関係の解消をめぐる問題を中心に、実効的なマンション法制の構想を目指すものである。 2021年度は、研究初年度として関係する国内外の資料の収集に努めるとともに、建替え決議制度やマンション敷地売却制度など、いわゆる「マンションの出口」問題に焦点を当て、現行制度について整理し、課題の抽出を行った。また、オンラインで弁護士などの実務家も招いた研究会を開催し、現行制度の整理と課題についてとりまとめたものを篠原が報告し、特に実務的な観点からの意見交換を行った。 次年度以降の検討課題として確認されたのは、特に次の3点である。第一に、現行の建替え決議制度やマンション敷地売却制度は、区分所有者の団体の自発的な対応に期待した制度設計となっているところ、招集通知に反応がない区分所有者がいる場合などには、決議の成立が危ぶまれる状況が生じるため、決議要件の分母からの除外、「みなし同意」制度、財産管理人制度といった、合意形成を補う仕組みについて、其々の長所・短所を検討する必要がある。第二に、費用負担等の問題から区分所有者の合意形成が進まない結果、周辺住民の生命・身体に対する一定程度以上の危険をマンションが生じさせた場合等に備え、行政機関の積極的関与によって建替えやマンション敷地売却を進めさせる仕組みについて検討する必要がある。また、最後は行政代執行によって修繕や解体を行うとしても、その場合の費用徴収の仕組みについても検討が必要になる。第三に、「マンションの出口」で問題を生じさせないよう、費用の積立て、修繕等の計画化など、マンションの適正な管理についても検討を及ぼす必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現行制度の整理・検討、実務家との意見交換を通じて、憲法学・行政法学・民法学が共同して検討すべき課題を具体的に抽出することには成功したのではないかと思われる。しかしながら、コロナウィルス感染症の影響により、当初予定していた、建替えや敷地売却が実際に問題になっている老朽化マンション等の実態調査、関係する行政機関の担当者へのインタビューなどは十分に行うことができなかった。そのため、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を踏まえ、①区分所有者の団体の合意形成を補う仕組み、②行政機関のより積極的な関与の仕組み、③マンションの適正な管理を確保するための仕組みについて、憲法学・行政法学・民法学の各観点から具体的に検討を行うとともに、定期的に研究会を開催し、実務家や関係分野の研究者との意見交換を積極的に行いたい。また、老朽化マンション等の実態調査を行うことも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の影響で、出張の調整がうまくいかず、旅費を使うことが全くできなかった。また、関連領域の研究者や実務家を招いての対面での研究会も開催できず、予定どおりに謝金等を使用することもできなかった。2022年度は、対面の他、オンライン会議を利用することで、定期的に実務家等を招いた研究会を開催することを予定している。
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