研究課題/領域番号 |
21K01165
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
岡松 暁子 法政大学, 人間環境学部, 教授 (40391081)
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研究分担者 |
森田 章夫 法政大学, 法学部, 教授 (30239652)
道垣内 正人 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (70114577)
青木 節子 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (90317339)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 原子力の平和利用 / 原子力損害賠償 / 核抑止 / Planetary Defense / NEO / 国家管轄権 / 制裁 / 英国 |
研究実績の概要 |
岡松は、原子力の平和利用にかかる諸問題を抽出・整理するため、まずは、放射性廃棄物の処理を巡る問題を、特に福島第一原子力発電所の事故後のALPS処理水に焦点を当てて研究を行った。道垣内は、核兵器保有国である英国における原子力発電事業について概観するとともに、原子力発電の将来を支える原子力損害賠償法制について研究を行った。これまで、いくつかの裁判例が蓄積されており、過去に放出された放射性物質が風で飛来した場合に責任を認めた判決があるところ、新法では責任を否定しており、福島事故後の日本にとっても参考となると考えられる。宇宙空間における核兵器問題については、宇宙での核兵器の使用は禁止されているが、地球接近天体(NEO)の軌道を変更させ、または当該天体自体を破壊して地球を守るためには核兵器の利用が最も有効である場合も想定される。地球を防御するために行う核兵器利用を含めた「力」の行使は一般に武力行使の要件を欠くが、物理的な「力」の行使にはどのような国際法上の制約がかかるのかという点、また、一般的な軍備管理の中で宇宙抑止を核抑止理論から切り離すことの可能性を、青木が検討した。森田は、立法管轄権のいわゆる「域外適用」問題につき、(1)国家管轄権の作用分類に関して2分類論と3分類論には、それぞれを支持する国家の動向が背後にあり、容易には解消できない対立が存在する。(2)立法管轄権のいわゆる「域外適用」問題は、従来、大きな混乱と対立があったが、これに関して、「ある法(lex lata)」と「あるべき法(lex ferenda)」、「共存の国際法」と「協力の国際法」をそれぞれ区別し、その交錯に着目することが有益と考えられる、との見解を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響で、当初予定していた海外調査が行えず、また、国内・国際学会が縮小・中止されたことで研究の報告の機会が十分には得られなかった。 他方で、文献蒐集・調査を中心に進め、これまでの蓄積と合わせ、論文6本、書籍7冊を公表し、学会報告を2件行うことができたことは、大きな成果であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
岡松は、従前の核不拡散政策に関する歴史的展開の分析に加え、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻によって再考する必要がでてきた核兵器をめぐる国際管理体制を検討する。特に、ロシアとの関係で核兵器を放棄したウクライナへの侵攻であることがどのような意味を持つのかに注目したい。道垣内は、福島第一原子力発電所事故が他の国の原子力損害賠償法制にいかなる影響を与えているか、特に日本で原子力事業者が支払義務を課され、支払われつつある約10兆円の損害賠償額が有限責任を採用している国々がどのように評価し、それにどのように対応しているかについて研究を行う。青木は、月での無人・有人活動や火星以遠の惑星探査に必須といえる宇宙での原子力電源利用について、国連の原子力電源衛星原則、国連・国際原子力機関(IAEA)が共同で作成した安全枠組文書、ならびに各国の国内履行措置および独自の原子力電源政策について、宇宙の安全保障、安全、長期持続性の観点からの評価をし、宇宙活動における原子力平和利用の法的意義と問題点を抽出する。森田は、従来の米国のイラン制裁の「復活」に加えて、ソ連のウクライナ「侵略」問題につき、西側諸国の一方的制裁に関しては、立法管轄権の「域外適用」が広範に見られることから、この点の分析により、経済制裁の手段としての立法管轄権の「域外適用」の適法性と有効性に関する研究が多数活字化されることが予想される為、これらを丹念に分析することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で、学会や研究会がオンラインとなり、交通費の支出がなかった。また、海外調査が中止となったため、出張費の支出がなかった。
今年度からは、徐々に学会や研究会も対面に戻ってきているものもあり、また、海外出張も可能になる可能性があるため、前年度に行えなかった国際学会への出席や調査を行う予定である。
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