研究課題/領域番号 |
21K01234
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
原 弘明 関西大学, 法学部, 教授 (70546720)
|
研究分担者 |
笹本 幸祐 関西大学, 法学部, 教授 (10279250)
村田 大樹 関西大学, 法学部, 教授 (10509227)
馬場 圭太 関西大学, 法学部, 教授 (20287931)
南 健悟 日本大学, 法学部, 教授 (70556844)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 匿名組合 / 場屋営業 / 免責約款 / 消費者契約 / 契約適合性 / 報酬請求権 / 運送人 / 安全配慮義務 |
研究実績の概要 |
原は匿名組合の営業者の善管注意義務を検討している。判例を契機に議論が再燃しているが、匿名組合が様々な投資スキームに活用されている実態や、匿名組合員の出資が営業者の財産と混同される位置づけが組合の規定の類推という多数説でうまく処理できないことに疑問を抱いている。概説書として北村編[2022]・小柿ほか[2022]を上梓した。 笹本は場屋営業である宿泊施設の免責約款を調査した。今後宿泊施設の賠償責任保険によるカバーなど検討を進める予定であるが、現状においても宅配便の責任を下回る責任のものが多いなど、問題が顕在化している。 馬場は消費者契約における契約適合性をめぐる諸問題を中心に研究を進めた。とりわけ、デジタル・コンテンツ供給契約解消後の原状回復の場面において事業者と消費者が負う義務の内容について、EU消費者私法を参考に検討した。後掲の業績のほか、韓国消費者法学会・関西大学共催韓日学術セミナーで消費者団体訴訟の報告を行った。 村田は商法512条について、不動産仲介契約を中心に検討した。同条は民法の特則であるが、裁判例では、当事者間に一定の成果について報酬を支払う旨の合意がある場合、成果未達成にもかかわらず、仲介業者の働きに応じて割合的な報酬を認める根拠として持ち出される。民法からは契約解釈の問題に思われ、債権法改正の委任の報酬に関する履行割合型と成果報酬型の区別とも整合しないように思われる。 南は運送人の責任原則につき、民法上の債務不履行との比較を検討した。旅客運送人の責任原則も過失推定責任であると説明され、旅客が運送のために損害を受けた場合には、旅客運送人が無過失を主張立証しなければならないと説明されているが、旅客運送人の債務には安全配慮義務が含まれていると解され、債権者が同義務違反を主張立証しなければならないとされることと平仄があうか研究した。南[2022]に掲載予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍という特殊な状況において、分担者の南が遠隔地にいることもあり特に対面での研究会開催などに支障が生じているものの、報告機会としては代表者・分担者がそれぞれオンラインで開催されたセミナーで報告するなど一定のフォローアップができているものと認識している。リサーチに関しては洋書の文献入手に若干の時間を要する状況にはここ数年改善が見られないものの、研究初年度の今年度は代表者・分担者の多くの研究対象が内国法の状況に関するものであったため、大きなビハインドはとっていない。内国・外国を問わずコロナ禍における行動制限が大学組織においては強くかかっていたため、出張を伴う調査に支障が出ていることは紛れもない事実であり、その意味で文献ベースでの検討にウエイトが置かれているという事実は否めない。そのような限定はつくものの、オンラインで入手可能な文献が一定数あることも相まって、おおむね順調に進展していると自己評価する。 商行為法分野の規定は総則、各則の集合体となっており、また(論者によって評価は分かれうると思うが)総則が各則を拘束する要素も比較的少ない。そのため、比較的個々の研究者ごとの研究に適した制度内容となっている。もとより、研究が進むに従って全体を通底する視点が求められることは事実であり、2年目以降については相互の研究状況についてのすりあわせがより求められる状況になることは明らかである。しかしながら、その前提をなすべき初年度の代表者・分担者の研究ペースとしては、順調であったと評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、本研究課題の主眼とする、民商法改正後の商法の位置付けについては、民商法の双方の研究者により熱い視線が注がれており、同時並行的に学術雑誌上の特集が組まれている。法学教室誌では1年間にわたり連載が行われる見込みであり、民商法雑誌においても詳細な特集が組まれた。 本研究課題の代表者・分担者としても、これらのフォローアップは欠かせないものと認識している。また、それらの具体的内容は実際の公刊を待つほかないものの、本研究課題における代表者・分担者の具体的テーマ設定は当然ながらそれらの研究と完全一致するものではなく、本研究課題のオリジナリティを遺憾なく発揮できる余地があるものと考える。これらの点については、担当者の独創性を最大限尊重することによって、研究を進捗させたい。 他方で、テーマ設定が上記のような特集とオーバーラップするものもいくつか想定される。これらについては上記特集の内容を十分に吟味した上でのオリジナリティの確保が不可欠となる。必要に応じてこれら特集の原稿執筆者と意見交換を行うなどして、内容のブラッシュアップを図ることとしたい。 本研究は学内研究費の助成も同時に受けており、2年目の次年度終了時には、代表者・分担者が論文をまとめて研究叢書を上梓する予定となっている。本科研費課題は3カ年を予定しているためさらなる研究の進捗が求められることは言うまでもないが、まずは研究叢書に収めるための論文執筆に注力することとしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
特に洋書等の購入にかかる時間を要しているため。次年度以降に入手できるものについては次年度以降改めて計上する。
|