研究課題/領域番号 |
21K01292
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上川 龍之進 大阪大学, 大学院法学研究科, 教授 (40346656)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 財政赤字 / 財政危機 / 予算編成 / 消費税 / 財務省(大蔵省) / 首相 / 税制改正 / 財政金融政策 |
研究実績の概要 |
2023年度は、前年度に引き続き、財政赤字に関する比較政治学の研究を収集、整理し、精読を行った。また村山内閣での消費税率引き上げの決定から、橋本内閣での消費税率引き上げと財政構造改革の実施、小渕内閣、森内閣での景気対策のための財政出動、小泉内閣での財政緊縮政策と、郵政選挙以後の歳出・歳入一体改革、福田内閣、麻生内閣での改革路線の転換をめぐる政治対立に至るまでの政治過程について、ジャーナリストや政治学者の研究や、歴代首相、有力政治家の回顧録などにあたって、検討を進めた。 これらの研究から、以下の点を確認した。①国民福祉税に強く反対した村山首相は、直間比率の是正はやむを得ないと考えていたことにくわえて、多年度税収中立による直接税減税の実施のため、消費税率引き上げを認めざるを得なくなった。②橋本内閣で財政構造改革が行われたのは、政権の求心力を高めるという政治的思惑が一因であった。③小泉首相は「小さな政府」という強い信念から緊縮政策を進めたのだが、「抵抗勢力」との闘いを演出して世論の支持を集めるという政治的戦略や、「橋本派潰し」の考えから構造改革を唱えたという面もあった。④福田首相は、野党の民主党を政権に引き込むために、構造改革路線を転換させ、社会保障の機能強化を名目に消費税率引き上げを検討しようとした。⑤麻生首相は、リーマン・ショックに対応するための大規模財政出動への批判をかわし、小沢代表率いる民主党の無責任さを強調しようとして、3年後の消費税率引き上げを決めようとした。 このように時の首相が財政再建や消費税増税を行おうとしたのは、財政再建への強い意志からというよりも、その時々の政治的思惑からだとする本研究の主張が、概ね確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は民主党政権の時期まで研究を進めていく予定であったものの、残念ながら麻生内閣までしか研究を進めることができなかった。これは研究以外の用務が多く、研究の時間が削られたためである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であるため、民主党政権から第2次安倍政権までの政治過程について資料にあたって調査することにくわえて、研究成果を単著にまとめることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた海外出張とパソコンの購入を次年度に延期したことによる。次年度に、海外出張を行い、パソコンを購入することを計画している。
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