研究課題/領域番号 |
21K01306
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
溝口 修平 法政大学, 法学部, 教授 (20648894)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 権威主義 / 正統性 / ロシア |
研究実績の概要 |
現在、世界的に「強い指導者」を求める傾向が強まっており、その背景や要因の解明が求められている。また、ロシアではプーチン体制の個人主義化が進行している。そこで、本研究は、ロシアの権威主義体制において(a) 独裁者がその統治をどのように正当化しているか、(b) 独裁者による正当化を社会がどのよ うに受け止めているか、という2つを検討している。 2021年度は、(a)については、ロシアにおける愛国主義の言説、そしてロシアにおける中央・地方のエリート間関係という2つの観点から考察した。前者については、既存研究を渉猟し、来年度以降の分析の計画を立てた。後者については、ロシアで地方知事の公選制が導入されたのちも、その選出を中央がどのように統制しているかを分析し、日本比較政治学会で報告した。その成果はまもなく同学会の年報に掲載される予定である。 (b)については、2014年のクリミア併合以降のロシアにおけるプーチンの支持率の変化を、社会的属性に分けて分析し、どのような属性を持つ人がプーチンを支持しているかを考察した。その分析結果については、2021年8月にオンラインで開催されたThe International Council for Central and East European Studies (ICCE ES) 10th World Congressで報告した。現在こちらはジャーナルへの投稿を目指して修正作業中である。 さらに、2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻の背景についても考察する論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の点について当初の計画通り研究は進んでいる。2021年度もコロナウイルスの感染拡大が原因で現地調査を行えなかったが、他の研究者やジャーナリストの方々と合同でロシアの識者とオンラインでインタビューする機会を得られたため、ある程度は現地調査を行えていないことを補えた。
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今後の研究の推進方策 |
(a)については、2012年大統領復帰後のプーチン大統領の言説の変化を分析するとともに、2020年憲法改正に関する文献調査を北海道大学スラブ・ユー ラシア研究センターで実施する。また、(b)については、引き続き論文の修正作業を続け、英文ジャーナルに投稿することを目指す。 また、2022年2月からロシアがウクライナに軍事侵攻したことは、ロシアの国際社会における立ち位置だけではなく、プーチン体制のあり方を大きく変化させる事件であった。そして、この軍事侵攻は本研究の意義をさらに大きなものにしたと言える。したがって、次年度以降はこの軍事侵攻の問題も併せて本研究の課題に取り組む必要がある。すでにいくつかの媒体で自分の考えを発表しているので、それらをまとめつつ、本研究に接続することを検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、各種学会や研究会がオンライン開催になったことに加え、ロシアへの現地調査も行えなかったため、次年度使用額が生じることになった。2022年度は学会なども対面で開催予定となっており、前年度よりは旅費の支出が増える予定である。また、軍事侵攻後のロシアの状況について調査を行うか、欧州諸国の専門家へのインタビューを行うことを計画している。
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