研究課題/領域番号 |
21K01306
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
溝口 修平 法政大学, 法学部, 教授 (20648894)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロシア / 権威主義 / 正統性 |
研究実績の概要 |
今年度は,2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まったことを踏まえて,「なぜロシアがウクライナに侵略したか」という問題を,主にロシア国内の文脈から分析した。この問題は,ロシアの政治体制においてプーチン大統領に権力が集中しているという問題と密接に関わっており,期せずして本研究のテーマと現実が強くリンクすることになった。 研究の具体的な内容は以下の3点にまとめられる。第一に,政治制度の変化についてである。憲法改正や中央・地方関係の変化を分析することにより,制度面で大統領への権力集中がいかに進行してきたかを分析した。第二に,プーチン個人の思想的変化に関する分析である。ロシア・ウクライナ戦争は「プーチンの戦争」と言われるように,プーチン個人の思想が大きく影響していると考えられる。そこで2000年の大統領就任以来,彼の言説がどのように変化してきたかを分析した。第三に,ロシア社会の変化である。2014年のクリミア併合においても,ウクライナ侵攻においても,プーチン大統領の支持率は大きく上昇した。そこで,この2つの事例を比較しながら,ロシア社会のどのような人々が現在の政権を支持しているのかを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
戦争の勃発は予期せぬ事態であり,ロシアへの渡航や情報収集が困難になったことは想定外の事態であった。しかし,昨年までの研究の蓄積を利用して,今年度も研究を遂行することができた。また,海外渡航の制限もほぼ解除されたため,久しぶりに海外出張をして,海外の研究者などにインタビューを行うこともできた。そのため,全体の進行状況としては順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を踏まえ,本課題の最終年度には以下のように研究成果をまとめていきたい。第一に,ロシアにおいて政権が憲法改正を活用して権力強化を図ってきたこと,そこでどのような正当化がなされてきたかを分析し,論文にまとめる。第二に,クリミア併合後のロシア社会の変化についても論文にまとめる。第三に,プーチンの思想的変化について計量テキスト分析を利用して分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ戦争の影響で現地での調査が困難であったため,次年度使用額が生じる結果になった。2023年度は対面開催予定の複数の学会で登壇予定であり、前年度より旅費の支出が増える予定である。また、軍事侵攻後のロシアの状況について調査を行うか、欧州諸国の専門家へのインタビューを行うことを計画している。
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