研究課題/領域番号 |
21K01360
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
富樫 耕介 同志社大学, 政策学部, 准教授 (80803444)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イリベラル・ピース / 権威主義体制による平和 / 紛争後の安定 / リベラル・ピース / チェチェン / カドィロフ体制 / 体制の正当化 |
研究実績の概要 |
本年は、新型コロナ・ウィルスの関係から現地調査が困難であったため、主に文献による調査・研究に重点を当てた。 本年の取り組みとして第一に権威主義体制による紛争管理、あるいは紛争後の権威主義体制下の「平和」の機能についての議論を整理したことが挙げられる。比較政治学の研究領域において権威主義体制の安定性についての学問的蓄積は豊富だが、国内・国際紛争に対して権威主義国家独自の紛争管理形態があるのかは非常に論争をよぶ研究テーマである。これは、リベラル・ピースとは異なるイリベラル・ピースと形容されるもので、近年急速に研究が進んでいる。イリベラル・ピースには、権威主義的な地域大国が特定の紛争に関与し、政府側など紛争当事者の一方を支援することで、紛争の激化や泥沼化が防ぐという国際的関与の側面と、権威主義的な政府が反乱勢力を排除した上で安定的な体制を構築するという国内的側面がある。本研究では、前者についてロシアによる第二次カラバフ紛争への関与を、後者についてはチェチェン紛争後の権威主義的統治に焦点を当てつつ、どのようにして「平和」が提供され、機能しているのかを考察した。 第二に、第二次紛争後のチェチェン共和国に焦点を当て、親ロシア的な政府側による一方的な軍事的勝利のあとに生じている現地の安定性についての考察を進めたことが挙げられる。紛争後に誕生した非常に権威主義的なカドィロフ体制は、いかにしてその体制を正当化し、そしてその権威や統治は住民にどのように浸透しているのであろうか。体制による言論空間の支配と、エリートの抱き込み、反対派の弾圧という三つの観点から検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナがあり、現地に行けず、研究も思いのほか進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
権威主義体制による紛争管理、イリベラル・ピースについては、事例が充実しており、それらの事例的考察を今後深めていき、不足している理論的な分析概念や枠組みについても事例的な理解をもとに筆者自身が構築できるか検討するつもりである。 チェチェン共和国における調査は、コロナはもとより、ロシアによるウクライナ戦争によって実現が不可能になっている。他方で、体制側による紛争後の権威主義的な平和の正当化については、カドィロフ首長の言説分析をすれば可能であるとみられ、また住民についても少数とはいえ、既に調査しているので、これらをもとにした考察・分析を進める必要がある。
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