研究課題/領域番号 |
21K01504
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
奥山 忠裕 下関市立大学, 経済学部, 教授 (20422587)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 消費抑制 / 便益計測 / 観光需要 |
研究実績の概要 |
感染症の影響による消費の低迷は社会的な課題の一つである。本年度は,本課題の目的にある消費者側のリスク受容指標の理論モデルの開発と対策施策を考慮した実証分析へ向けた理論モデルの構築を行った。基本的なモデル構造は効用最大化問題に基づく消費者行動モデルである。本研究では,基本モデルの拡張として,消費の中止(抑制)回数が,社会的な義務感などを消費することを仮定し,結果隠れた効用を発生させることを想定することで,便益計測可能なモデルの構築を検討した。便益の定義のため,観光需要とそれに関する家計生産関数を仮定し、観測された観光需要水準とCOVID-19発生による中止回数の水準(α)の関係式を設計した。また,観光地での滞在時間、歴史的建造物や商品の数など観光地の質を変えることで、時間の価値(VOT)、質の価値(VOQ)、消費の自制の価値(VOS)の限界利益をそれぞれ導出可能なことを示した。この限界便益の特徴を数値シミュレーションにより検討した。まず、限界便益の符号を確認すると、VOTとVOQは正、VOSは負であり、自粛による負の便益(VOS)は正の便益より相対的に大きいことが示された。次に、便益値の変化の傾向の確認である。α値の増加はVOT、VOQ、VOSの減少につながり、VOSの減少の加速度は限界便益の中で最も大きいようである。最後に、パラメータの頑健性を確認するため,総利用時間のパラメータ変化の検証を行った。パラメータ値の違いによるVOQとVOSの変化は、VOTのそれよりも相対的に小さいことが示された。今後の課題として,第一に、家計の生産関数形式や期待生産財の特徴の違いによる便益価値への影響を分析すること,第二に、実証的な推定モデルを検討すること,第三に、家計生産関数を仮定しないモデル(すなわち、需要関数を用いた標準的な推計モデル)を検討し、本モデルの適用範囲を向上させることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,感染症発生下における政策実施のタイミングに関する分析にある。そのため,消費行動に関する分析を行っている。分析の中で,理論モデルの構築と実証分析が必要となるが,理論モデルの構築は終了しその一部は成果とし公表が決定している。次に,実証分析については,データ収集を終えており,収集されたデータによる分析の一部が終了し,現在,公表準備を行っていることから,おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず,消費者分析に関する実証上の新たな課題が指摘されたため,①家計の生産関数形式や生産財の特徴の違いによる便益価値への影響を分析すること、②実証的な推定モデルをより分析に適したモデルになるよう検討すること,③家計生産関数を仮定しないモデル(すなわち、需要関数を用いた標準的な推計)を検討していきたい。次に,研究目的にある生産者側のリスク受容指標の理論モデルの開発と対策施策を考慮した実証分析のための実証モデルおよび調査票の作成を実施する予定である。
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