【2023年度】の研究成果:本年度の目的は,調査対象者の業種を選別することで,仮想行動法による生産者行動の分析手法について考察を行った.調査対象は,旅行業であり,新型コロナウイルスによる死亡リスクを削減するために,旅行価格に追加してよいと考える追加料金に関する質問を行った.死亡リスクを20%削減~80%削減の場合に対し,追加してもよいと考える額の平均値は700円~4700円,中央値は100円~3800円となった.分析の課題として,仮想的な状況の中に企業情報を含める必要があること,個人属性の影響をゼロとして評価結果を導出する必要があることが示唆された. 【期間全体】を通じた研究成果:本研究では,コロナ対策を念頭に分析を行った.まず,コロナウイルス感染症のパンデミック時に観察されたような,自粛により消費が抑制された家計生産による便益評価モデルの開発を行った.本モデルでは,時間価値(VOT),環境品質価値(VOQ),自粛消費価値(VOS)の便益を測定するモデルを提案した.数値シミュレーションにより,これらの便益は単一のモデリングシステムで測定可能であること,絶対的なVOSは他の便益よりも大きい可能性があること,VOSは自制消費の増加に伴い指数関数的に減少すること,VOTはパラメータ値の度合いに敏感である可能性があることを示された. 次に,観察された訪問回数に中止回数を加えることで,観光回数に基づく消費抑制の便益を主便益,消費の抑制分を副次的便益として同時に計測する簡便な評価モデルの構築を行った.理論モデルとともに,繰り返し離散選択モデルを用いた推計例を示した.実証分析の結果,副次的便益の値は,観察された需要量からの便益値の約84%となることを示唆した. 最後に,企業側の研究として上記の2023年度の研究を行った.
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