研究課題/領域番号 |
21K01756
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 善信 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (00140476)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マーケティング・インプロビゼーション / 組織レジリエンス / クライシス・マネジメント / クライシス・コミュニケーション / オーセンティック・ブランディング / オーセンティシティ / インターナル・マネジメント |
研究実績の概要 |
科研費のテーマ(「コロナ禍での即時的マーケティング対応によるイノベーション創出メカニズムの解明」)にかかわった2021年度の研究の進展状況は以下の通りである。 学会報告とそのフルペーパーは3本であった。具体的な内容は2つである。1つは、コロナ禍の中で企業はどのようにして、インターナル・マーケティングの一環としてクライシス・コミュニケーションを行っているのかを考察した。具体的には、(株)東邦レオの社長と会長に、(株)竹延の社長にインタビューさせていただき、そのケースをベースにしてフルペーパーにまとめた。もう1つは、茶の湯と生け花のコロナ対応としてのインターネット活用についてである。この研究においても、当事者たちのインタビューをベースにして理論的考察を行なった。 もう一つの研究の進展は、公益財団法人神戸ファッション協会が主催する経営者のための勉強会である「新次世代の会」(年間5回の開催)のコーディネーターとしての立場からのものである。2021年度の新次世代の会では、統一テーマを「レジリエント・リーダーシップ:コロナ後の飛躍のために」と設定して勉強会を行った。特に、コロナ禍での企業対応のケースとして、(株)まねき食品、(株)かね徳、(株)イムラ封筒の社長にインタビューさせていただき、その内容をケースにまとめた。また、勉強会当日には、それぞれケースの当事者である社長にもゲストスピーカーとして参加して頂いた。 このインタビューの知見を活かして、2022年度は、コロナ後の世界を前提にして、オーセンティック・ブランディングに焦点を絞り込みながら研究を進展させる計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進展であるが、2021年度は5社の経営トップにコロナ禍への対応とそこからのイノベーションの発生要因についてインタビューさせていただいた。そこからは様々なイノベーションを発生させるマーケティング・インプロビゼーション(=より大きなロジックとしてはブリコラージュ)を発見することができた。 例えば、まねき食品では、冷凍弁当の開発がコロナ対応をきっかけとする大きなイノベーションになっているが、それは従業員からの提案であった。逆に、竹延では建設アシストという画期的なビジネスを進展させているが、それは社長のアイディアがベースになっている。また、東邦レオは依頼型のビジネスモデルによって、担当社員がコア・メンバーとなってイノベーションを発生させている点が明らかとなった。 以上のことから、研究は一定の成果を挙げており、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策であるが、これまでは「おおむね順調に進展している」と考えられるので、これまでのペースで研究を進展させてゆく。具体的には、企業のトップへのインタビューの遂行とそのケース分析、先行研究の探索と整理、そして研究課題の理論的展開が、そのプロセスとなる。 研究の1年目が終了し、新しい研究課題も発生してくるようになった。コロナ禍の対応でイノベーションを発生させることに成功した企業の、そのプロセスをどのように企業内外に伝達すれば良いのかという研究テーマがそうである。これはオーセンティック・ブランディング研究の領域の研究テーマに当たる。2022年度にはこの分野の先行研究も探索し、その内容を整理してゆきたいと考える。 その上で、本研究課題の最終年度での研究課題である「イノベーション創出メカニズム」の理論化の準備をしたい。恐らく、イノベーション創出メカニズムは、ブリコラージュ的なコロナ禍対応⇒イノベーションの芽の発見⇒その芽を試行錯誤的に成長させる⇒コーゼーションのロジックとしてイノベーションを定着させる、といった戦略のロジックになると考えられる。このプロセスの中で、オーセンティック・ブランディングは企業内外への、このイノベーションを成長させるためのエクスターナル&インターナル・ブランディングとなる。その両者間の関係の考察も重要であると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は2つある。どちらもコロナ禍に起因する理由である。1つ目の理由は企業経営者へのヒアリングがリモート(Zoomミィーティング)で行ったことにある。もう1つの理由は学会がリモート開催になったため、学会への出張旅費が不必要になったためである。 また、次年度の研究費の使用は以下のように計画している。まず、コロナ禍の状況を考慮しながら、企業経営者へのヒアリングと研究対象施設の視察をリモートではなくリアルに実施する。例えば、(株)東邦レオが運営する東京のkudan houseの視察とその施設の運営担当者へのインタビューである。この施設はブランドのオーセンティシティを調査する格好の場であると考えている。また、同社が実験的にエリアマネジメントの運営を開始した東京の『SLIT(スリット) PARK(パーク)』はコロナ禍の中でのエリアマネジメント手法のイノベーションを生み出した事例と考えられる。このようなリアルでの研究視察を積極的に展開したい。また、視察やフィールドノートを整理するのに必要な備品の購入や研究協力者への謝金も使用の予定である。そして、これらの研究成果を学会でもリアルで発表する予定である。それに必要な費用も使用する。
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