研究課題/領域番号 |
21K01789
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
宮地 晃輔 長崎県立大学, 経営学部, 教授 (60332011)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地域経済 / BSC(Balanced Scorecard) / 産業クラスターBSC/ / 今治海事クラスター / 自立化モデル |
研究実績の概要 |
本研究で必要とされる理論的・実践的整理の一環として、産業クラスター(海事クラスター)における主要プレイヤー企業経営者の最新の競争戦略を把握するために調査を行った。主なものとして、2021(令和3)年10月8日(金)バリシップ2021国際会議に出席をして最新動向を把握した。 バリシップ2021国際会議では、今治造船桧垣幸人社長・新来島どっく曽我哲司社長・潮冷熱小田茂晴社長・BEMAC小田雅人社長・眞鍋造機眞鍋将之社長をパネリストに、造船・舶用経営者パネルディスカッション「2030年、日本の造船・船舶が勝ち残るには」が開催され、海事クラスター主要プレイヤー企業経営者の最新の現状認識・競争戦略に対する考え方を直接的に把握するには最適の場であり、本研究の目的を推進するための理論的・実践的整理を行うための研究材料を収集した。 また、同国際会議では、今治海事クラスターの主要プレイヤー企業の一員でありシップファイナンス事業を営む伊予銀行の三好賢治頭取より「伊予銀行のシップファイナンスへの取り組み~愛媛の海事クラスターの一員として~」のテーマで特別講演が行われた。同特別講演の講演内容から今治海事クラスターを支える地域金融機関の情報を把握することができ、この点からも本研究の目的を推進するための研究材料を収集することができた。 同様に、同国際会議では造船企業に対する船舶建造の発注者となる船主によるパネルディスカッションが行われ、本研究の目的を推進するための研究材料を収集することができた。船主経営者パネルディスカッションは、瀬野汽船瀬野洋一郎社長・東慶海運長谷部圭治会長、日鮮海運阿部克也社長、福神汽船瀬野利之社長をパネリストに、「国内船主の勝ち残り戦略」をテーマに行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産業クラスター(今治海事クラスター)全体の競争力を高めるためには、当該クラスター全体の成長戦略を策定し、参加するプレイヤー間で共有することが必要であるとの立場から、これを実行するためにはBalanced Scorecard(以下、BSC)を導入・運用することが有効との仮説を設定した。今治海事クラスターの主要プレイヤーの中でもシップファイナンスを実行する金融機関は船舶建造資金を船主に対し資金供給する立場から今治地域での船づくりを支えている。金融機関は業務の性質上、多種の企業と取引を行っていることから、これまでにもビジネスマッチングや情報発信機能により企業同士を結び付ける役割を担ってきた。 今治海事クラスター全体の成長戦略を策定するためには、牽引役や調整役を担う主要プレイヤーが必要になるが、これらの役割をシップファイナンスを実行する金融機関が担うことは十分に可能性がある。 今治海事クラスター全体の成長が、当該クラスターに参加するプレイヤーの成長に直結するという前提に立てば、そのための戦略マップを策定し可視化し、プレイヤー間で共有する必要がある。可視化の手段として、主要プレイヤーの金融機関が作成・開示する統合報告(Integrated Reporting)を用いることが考えられる。この点については、その実現可能性を今後検討する。また、シップファイナンスを実行する金融機関以外が作成・開示する統合報告を用いる可能性についても今後検討する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のリサーチサイトである今治海事クラスターに対して、当該クラスターに参加するプレイヤー全体の競争力を、BSCを用いて高めていくための方向性についてインタビュー調査及びアンケート調査を行う。具体的な調査項目としては、「今治海事クラスターでのBSC導入・運用のコントローラーをどのように考えるか」、「BSCにおいて共有すべき戦略理解についてどのように考えるか」、「クラスターでの戦略の進捗状況の評価をいかなる仕組みで行うか」、「クラスターでの全体戦略と個別組織の戦略の整合性を持たせるための具体的な方法として何を考えるか」等がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画にもとづく申請額に対して交付決定額が757,000円減少したため、1年目の設備備品費520,000円・消耗品費90,000円を抑制したこと、及び新型コロナウイルス感染拡大により予定していた国内調査1件100,000円が実行できなかったことが主たる理由である。 令和3年度に実行できなかった国内調査については、令和4年度に実行し、研究計画全体の実行に支障が出ないように措置する。また令和4年度以降について、新型コロナウイルス感染拡大リスクに配慮しつつ、着実に研究計画を実行する。
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