研究課題/領域番号 |
21K01861
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
宇田 和子 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90733551)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 化学物質過敏症 / 論争中の病 / contested illness / 環境病 / 医学的に説明されない症状 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「医学的に説明されない症状」(medically unexplained symptoms)および「論争中の病」(contested illness)を患うという経験について、環境社会学と保健医療社会学の概念を用いて説明することである。医学的に説明されない症状とは、医学的検査では身体的な原因が見つからないが、当事者が訴えている不調のことである。論争中の病とは、診断基準や定量的な病気の進度の測定方法の未構築により、その実在をめぐって見解が分かれる病である。原因や治療法がわからない病を患うと、従来の説明体系が通用しなくなり、患者とその周囲の人びとは混乱に陥る。つまり個人と社会の水準において秩序が崩壊する。このとき、患者は自身の身に起きたことを意味づけ、周囲に説明するための語彙を必要とする。現在のところ「不定愁訴」なる医学的語彙はあるが、原因不明と同義であり、当事者を納得させられていない。そこで本研究は、化学物質過敏症をめぐる発症者や医師らの経験を調査し、社会学の病概念を駆使して病の社会的構成を明らかにする。 今年度は研究期間の一年目としてデータ収集を行った。文字データでは医学用語辞典、診断のつかない病に関する先行研究、不定愁訴に関する先行研究を蒐集した。これらを概観すると、診断のつかない病や不定愁訴が医学的には病と認められないことを前提に、患者にどう接すればよいかという医師の実践や、診断のつかない病が病と認められない根拠を提示するものがほとんどであった。 さらに、北関東で発症者の主宰するサロンに参加し、発症のきっかけや発症後の対策についてレクチャーを受けた。また、寝たきりで面接が困難な発症者に、書面で質問を送付し、回答する声を録音して返送していただいた。さらに、遠方の発症者から携帯電話の基地局の稼働停止をめぐる裁判の記録を送っていただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りにデータ収集が進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、化学物質過敏症の国内外のケア環境について調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、感染症の流行により複数の現地調査を断念したためである。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は、先方が許せば現地調査を行う。それが困難な場合は、遠隔で可能な方法で対応する。
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