研究課題/領域番号 |
21K01869
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
野沢 慎司 明治学院大学, 社会学部, 教授 (40218318)
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研究分担者 |
菊地 真理 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (10616585)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ステップファミリー / 家族関係の複雑性 / 家族の多様性 / 子どもの福祉 / 家族制度・政策 |
研究実績の概要 |
調査計画の第一段階として、子どもの同居実母が再婚しているケースで、現在も別居父と交流が続いているケースを戦略的にサンプリングして、Zoomによるオンライン・インタビュー調査インタビュー調査を行った。先行して進めたケースと合わせて、これまでに計画された調査(a)、子どもの同居母親16名(2022年8月に1ケース追加実施)へのオンライン・インタビュー調査を終了した。その分析結果の一部は、菊地真理「ステップファミリーと養子制度の在り方について―『連れ子養子』は子の利益になるか」(『家庭の法と裁判』(家庭の法と裁判研究会編/日本加除出版) 39号28-33頁、2022年8月)および菊地真理・野沢慎司「ステップファミリーにおける継親子養子縁組が家族関係にもたらす影響」(日本離婚・再婚家族と子ども研究学会第5回大会自由報告、立正大学、2022年10月29日)として発表した。 同居母親の調査では、別居親と子どもとの親子関係の継続に積極的なケースのリクルートにかなりの困難を経験し、インタビューできたケースでも、再婚後に別居父子関係を継父子関係に代替させる傾向が目立った。それは再婚後にふたり親の揃った核家族を再現する方向へと水路づける、現行法制度の根強さに気づかせるものであったが、そうしたケースにおける子どもの経験について優先して探索するべきと判断し、当初の予定を変更して次に若年成人継子(とくに別居親との交流を継続して経験したケース)のオンライン・インタビュー調査(b)を実施した。2022年度末時点で18ケースを実施済みであり、録音データの文字化作業が終了した段階である。なお、調査(c) 別居父の立場(面会交流経験者)15名および調査(d) 同居継父(継子の面会交流経験者)15名へのインタビュー調査については研究代表者の所属大学において研究倫理審査が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
調査は継続しており、一定の成果を上げているが、大規模モニターを保有する大手の調査会社での募集であったにもかかわらず、新しいタイプの離婚・再婚後の家族形成の事例を対象に含めることの困難を昨年度に続いて経験している。先端的ケースの発見が難しいという課題に対して、調査会社の大規模な登録モニターだけではなく、支援団体など個人的なネットワークを通じて出遭ったケースなどを対象に含める修正を行いたかったが、それも簡単には実現できなかった。そのこと自体、日本社会において、離婚・再婚のプロセスにおいて親子関係が代替される傾向が強いことを傍証している。調査(a)の16ケースについては分析に取りかかっているものの、全体の調査実施の進行状態の遅れを考慮して、まずは一連のインタビュー調査の実施により、データ収集を完了させることを優先することとした。 上述のように実施の順番を変更し、当初2022年末あたりを目途に実施した。しかし、モニターへのスクリーニング調査への回答に基づくリクルート作業において、予想外に不正確で誤った回答が多く、私たちが狙っている親子関係継続型のステップファミリー経験者にたどり着き、スケジューリングすることに大きな困難を経験し、進行が大幅に遅延した。そのために、調査(c):別居父の立場(面会交流経験者)15名および調査(d):同居継父(継子の面会交流経験者)15名へのインタビューを2022年度内に行うという修正計画を完遂できなかった。別居父親調査と同居継父調査を2023年度に実施するかたちで調査全体を何とか今年度内に完了させたい。
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今後の研究の推進方策 |
別居父親調査と同居継父調査の協力者のリクルートおよびインタビュー調査の実施が今年度の修正計画となる。2023年度内に調査(b):別居父親15ケースおよび調査(c):同居継父15ケースを、この順序で実施することが現実的と判断している。この2つの調査の対象がいずれも男性である。これまでの2つの調査の対象である同居母はすべて女性、若年成人継子も圧倒的多数(16名中13名)が女性であった。女性の方が調査協力を得やすいという一般的な傾向を踏まえれば、今後の2つの調査においてはこれまで以上に協力者のリクルートの困難が予想できる。これまで以上に、個別のネットワーク、面会交流支援団体などからの紹介を通じて、協力者をリクルートする方策をとりたい。いずれにしても、以上のような計画変更のために、2022年度の予算残高を2023年度に繰り越して使用することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
協力者リクルートの困難さは、当初の予想以上のものであり、その意味で調査計画の再検討を要する。同時に、当初予定の調査結果の分析、研究報告や論文等の執筆にはさらに時間を要することが判明してきた。2022年度に実施できなかった調査(b):別居父親15ケースおよび調査(c):同居継父15ケースの調査実施のための費用を2023年度に使用する。この2つの調査については最終年度の実施へとずれ込まざるを得なかったためである。上記のような事情に加えて、前年度に引き続き、研究代表者・分担者は職場の役割過重、所属学会の役職・役割による多忙が生じて、健康問題に直面する場面もあったことも研究の進行遅延に影響している。 予算の使用計画は、当初通りの方法で変更はない。2つの調査(それぞれ15ケース)のインタビュー調査を実施することになる。前年度同様に研究協力者の継続的協力を得て、調査の実施を進める予定である。当初2023年度に予定していたデータ分析とその結果の発表については継続して作業を進めるが、国際学会等での報告などの予定は補助事業期間を1年延長して達成する可能性を含んでいる。
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