研究課題/領域番号 |
21K01869
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
野沢 慎司 明治学院大学, 社会学部, 教授 (40218318)
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研究分担者 |
菊地 真理 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (10616585)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ステップファミリー / 家族関係の複雑性 / 家族の多様性 / 子どもの福祉 / 家族制度・政策 |
研究実績の概要 |
これまでに計画された調査のうち、(a)子どもの同居母親17名へのインタビュー調査(2021年度)、(b)別居親との交流を継続して経験した若年成人継子18ケースへのインタビュー調査(2022年度)がすでに実施されいたが、2023年度は(d)ステップファミリーの別居父の立場の男性(面会交流経験者)17名へのインタビュー調査を実施した(厳密にはステップファミリー経験が希薄であることがインタビュー中に判明した1ケースを含むため、16ケースが分析対象となる)。一方、(c) 同居継父へのインタビュー調査は2023年度中に実施できなかったため、補助事業期間を1年延長して実施する。現在、研究倫理審査(明治学院大学)申請準備中である。なお、2023年度までに実施したインタビュー調査に触れた学会研究報告や研修・講演としては、以下のものなどがある。 ・菊地真理「親の離婚後の子どもと別居親との交流について(コメント)」家族問題研究学会例会(2023年12月9日) ・菊地真理・小榮住まゆ子・野沢慎司・髙田祐介「ステップファミリーをめぐる呼称の問題 ―離婚・再婚に関わる婉曲語使用は支援実践に何をもたらすのか」第6回日本離婚・再婚家族と子ども研究学会大会 ラウンドテーブル企画(2023年10月14日) ・菊地真理「ステップファミリー ―親の離婚・再婚と子どものキモチ」高知市子ども未来部子ども家庭支援センター 高知市子育て応援講演会(2023年11月5日)〔高知新聞ウェブ記事: https://kokoharekochi.com/article/hint/n66741/〕
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度までに実施したいずれの調査においても、別居親と子どもとの親子関係(交流)の継続に積極的なケースを探索し、リクルートし、日程調整するのに予想外の困難と時間を要したため、当初のスケジュールから大きく遅れることになった。当初の計画がやや非現実的で、見通しが甘かったことを認めざるを得ない。 大規模モニターを保有する大手の調査会社での募集であったにもかかわらず、新しいタイプの離婚・再婚後の家族形成の事例を対象に含めることの困難を引き続き経験している。これまでと異なり、2023年度の調査対象者(離婚後に子どもと別居した非親権者である父親)が、子どもとの交流を継続的に行っている比較的高齢の男性であるため、インタビュー協力者の探索がますます困難になった(一般に、家族経験を語ってもらう調査への男性の参加に障壁があるが、離婚経験についてはさらに心理的な抵抗感が強いのかもしれない)。モニターへのスクリーニング調査への回答に予想外に不正確で誤った回答が多いという問題への対応も行ったが、その問題は完全には解決せず、上記のように対象外のインタビューや直前のキャンセルなども複数生じた。 そこで、本格的な分析はすべての調査データがそろってから体系的に行うことにして、まずはデータ収集を優先させる方針にした。全体の調査実施の進行状態の遅れを考慮して、まずは一連のインタビュー調査の実施により、データ収集を完了させることを優先することとした。残された継子と同居した継父へのインタビュー調査でも、継子が別居父と交流を継続したケースをリクルートするのはさらに困難が予想されるが、残されている補助予算を投入し、2024年度のできるだけ前半に完了させ、データ分析を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
同居継父調査の協力者のリクルートおよびインタビュー調査の実施が今年度の修正計画となる。2024年度内に調査(c):同居継父13ケースを実施することが現実的と判断している。上述のように、女性の方が調査協力を得やすいという一般的な傾向を前提に考えれば、継子の別居父との交流を許容する継父という複雑な家族経験を語ることへの抵抗感を乗り越えてインタビューに応じていただける男性を探すのは容易ではないと推測する。昨年度の別居の非親権者である父親調査以上に、リクルート上の困難が予想される。 また、本研究の当初計画時に想定していた調査会社モニターからのリクルート費用が値上がりし、予想外に業務委託費が膨らんでしまった。したがって、この継父調査を実施して、ステップファミリーの異なる立場の当事者を一通りすべて調査する目的を達成することが最低限の目標となっている。 そこで、当初の目標数よりも少ない13ケースを一応のゴールと修正している。個別のネットワーク、面会交流支援団体などからの紹介を通じて、協力者をリクルートする方策も並行して探りたい。いずれにしても、以上のような計画変更のために、補助事業期間を1年延長し、2023年度の予算残高を2024年度に繰り越して使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述のように、協力者リクルートの困難さは昨年度のこの時期の予想以上のものであり、その意味で調査計画の再検討を要した。2023年度に実施できなかった調査 (c):同居継父13ケース(当初15ケースを下方修正)の調査実施のための費用を2024年度に使用する。この調査については補助事業期間を1年延長して、2024年度の実施へとずれ込まざるを得なかった。上記のような事情に加えて、研究代表者・分担者の双方が、職場の役割過重、所属学会の役職・役割による多忙が生じ、健康上の問題に直面したことも研究の進行遅延に影響している。 予算の使用計画は、インタビュー調査実施ケースを15ケースから13ケースへと縮小させるが、基本的には同様のかたちで実施する。前年度同様に研究協力者の継続的協力を得て、調査の実施を進められる予定である。当初2023年度に予定していたデータ分析とその結果の発表については継続して作業を進めるが、国際学会等での報告などは、2024年度末あるいは翌年度に達成する可能性を含んでいる。
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