研究課題/領域番号 |
21K01938
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
乾 順子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 准教授 (00716897)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 老親 / 成人子 / 同居 / 扶養 / 介護 |
研究実績の概要 |
今年度は、大きく2つのことを行った。1つは前年度の実績であった老親との同居意識の変化と規定要因の論文を英文化し、これを章の1つとする英文の電子書籍の出版を行った。さらに、もう一つは、老親扶養と介護に関する論文の執筆を行った。 男女ともにNFRJ03時点では、介護意識の平均値が扶養意識のそれよりも高く、有意差があったが、どちらの意識も徐々に低下し、NFRJ18時点では、扶養意識のほうが高くなっている。男性では有意差はないが、女性は有意に介護意識のほうが低くなっていた。つまり、両意識はともに否定する方向に変化しているが、2004年から2019年の変化のスピードは介護意識のほうがやや早かった。 男性については、扶養・介護のどちらの意識も調査時点の効果が大きく、負の効果があるが、NFRJ03(2004年)時点と比較して相対的に時代によって変化が大きいのは介護意識のほうである。さまざまな変数でコントロールした上でも、介護意識の変化のスピードが速かった。年齢については、60歳代と比較して70歳代の男性はどちらの意識も肯定的であり、介護意識は30歳代以下と40歳代も肯定的である。コーホート効果はあまり見られないが、扶養意識は団塊世代に比べて高度経済成長期の出生コーホートが肯定的であり、介護意識は戦前、戦中世代がやや肯定的であった。 女性については、男性と同様、どちらの意識も調査時点の効果が大きく、負の効果があるが、NFRJ03(2004年)時点と比較して時代によって変化が大きいのは介護意識である。年齢の効果は女性では見られなかった。出生コーホートは、団塊世代を基準として、1956年以降出生コーホートにおいて扶養意識も介護意識も肯定的であり、中でも団塊ジュニア世代が最も肯定的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた海外学会での報告は、体調の問題から実現できなかったが、論文の英語での出版や新たな論文を執筆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、最終年度に向けて最後の大きな課題である介護の社会化意識に関する分析を進めている。 従属変数は母・義母を介護するのは誰と思うかに対する回答「施設等にまかせると思う」か否かである。独立変数は、年齢、学歴、世帯収入、都市規模、従業上の地位、配偶状況、兄弟姉妹の有無、住居の状況、介護の必要性、現在の介護の有無、介護経験、老親に対する家族意識であり、男女別に2項ロジスティック回帰分析を行った。分析の結果、同居・扶養・介護に係る家族意識は、施設介護等を選ぶかどうか(=介護の社会化)と関連があり、介護を実際しているかどうかの経験も影響を与えていた。女性の義母の施設介護についての回答は、夫の姉妹の有無と関連していた。 これらの分析を精緻化し、学会発表、論文執筆を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
8月にアメリカ社会学会で報告予定であったが、コロナに罹患したため、急遽渡米・報告を中止した。そのため、旅費等を次年度に繰り越した。2024年度の夏のアメリカ社会学会で報告を予定している。その際の旅費・参加費とする予定である。
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