研究課題/領域番号 |
21K01982
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
重田 史絵 立教大学, コミュニティ福祉学部, 助教 (30801542)
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研究分担者 |
高橋 秀人 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (80261808)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アウトカム評価 / 福祉サービス評価 / ICF(国際生活機能分類) / WHODAS2.0 / well-being / 福祉施設 / 支援効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、福祉施設が提供した支援により利用者が受けた効果(アウトカム)を測定することで、支援と効果の因果関係に基づく福祉施設を適切に評価する評価フレームを構築することである。本研究では利用者のアウトカムは、福祉すなわち利用者のwell-beingの高まりの測定、一方、支援の測定は「個別支援計画書」による支援量のデータ化により測定を行う。 令和3年度については、利用者アウトカムの測定方法を明確にする研究を行った。ヘルスサービスの評価の枠組みとしてポピュラーなドナベディアンの評価の枠組み(ストラクチャ、プロセス、アウトカム)にアウトプットを加えた枠組みと、マクロ(行政),メゾ(施設),ミクロ(個人)の3層構造による視点から成るマトリクス表(3層D-plusモデル)を用いて、障害福祉施設における評価項目を整理した。この評価項目をICF(国際生活機能分類)の分類項目に紐づけ、既存の評価指標との照合を行った。この結果、精神障害者を対象とする就労継続支援B型事業所においては、既存の評価指標であるGAFとWHODAS2.0の評価結果を用いて、利用者のアウトカムを測定することが適切であることが示唆された。 この3層D-plusモデルを用いた利用者アウトカムを測定する評価指標を明確にしていく方法の応用により、今後、他の福祉サービス種別の利用者アウトカムの測定のための評価指標を明確にしていくことが可能と考える。また、利用者アウトカム測定の評価指標が明確になったサービス種別において、個別支援計画書のデータによる支援量との因果関係を分析することにより、実際のサービス種別ごとの施設の支援現場において活用可能な、利用者本位の福祉施設評価の提言につなげていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、3層D-plusモデルの方法を用いることで、福祉サービス種別に応じた利用者アウトカムを測定するための評価指標を明確にする手法が準備された。また、個別支援計画書の支援量へのデータ化の手法が整いつつあり、2年目の調査に向けた準備はおおむね予定どおりである。 しかしながら、コロナ禍の状況を踏まえ、確実なデータ収集が可能な調査対象へと選定方法の変更を行った。これにより、精神障害者を主な利用者とする就労継続支援B型事業所の調査対象は準備されたものの、他のサービス種別の調査対象先との調整が不十分な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は個別支援計画書の提供とWHODAS2.0の評価協力が得られる調査対象先に、支援とアウトカムの追跡調査を行う。ただし、コロナ禍で福祉サービス支援の現場における支援の実態がイレギュラーな状況であることも踏まえると、個別支援計画書の内容と支援の実態の把握が可能であり、確実なデータ収集が可能な調査対象先を選定していく必要がある。調査対象先の調整に時間を要する可能性もあるため、状況を鑑みて調査実施時期の変更を検討することとする。 既に調査開始が可能な対象先についてはデータを収集し、支援とアウトカムの因果関係について分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、250施設に各施設5名の利用者に関する調査協力を郵送にて依頼する予定であったが、各施設の利用者全数調査に変更し、施設数を絞ったため、郵送代の支出が大幅に減った。また、データもExcelデータ等での入手が可能な施設もあるため、郵送代や入力の人件費が減る可能性がある。しかし、文字データを数値データ化する際の人件費として、目的を変更して使用する可能性も予定している。
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