研究課題/領域番号 |
21K02143
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
近藤 美樹 高知県立大学, 健康栄養学部, 教授 (80326412)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フキ / 調理・加工 / グルコシダーゼ阻害 / 抗酸化性 |
研究実績の概要 |
本研究は、フキ(Petasites japonicus Maxim.)の血糖値上昇抑制成分の同定および作用機序の検討、さらに調理における有効成分の挙動解析を通して、糖尿病対策への活用に向けた情報を得ることを目的にしている。既に昨年度までに血糖値上昇抑制に関与する二糖類分解酵素阻害に関する検討を終えたため、本年度は、先行研究において明らかにしている抗酸化性に着目し、以下の項目を実施した。 (1)フキ(花蕾、葉柄、葉)の調理・加工による抗酸化活性の挙動解析 花蕾を5種類(茹で、煮含め、蒸し、オーブン加熱、揚げ)、葉柄および葉を下処理後に3種類(茹で、煮含め、炒め)の方法で加熱調理し、それら試料由来の抽出物の抗酸化性について2,2 diphenyl-1-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカル消去活性を指標に検討した。その結果、花蕾は「未調理」と比較して、「煮含め」「蒸し」で活性は維持されたが、「茹で」「オーブン加熱」「揚げ」で有意に低下した。葉柄では「炒め」で維持されたが、「茹で」「煮含め」で有意に低下し、葉も類似の傾向を示した。これらの結果から、フキの抗酸化性の維持には、花蕾は「煮含め」「蒸し」、葉柄および葉は「炒め」調理が適していることが明らかになった。また、フキの主要抗酸化成分の特徴として、成分Aは水媒体に流出し易いが熱安定性が高く、成分Bは熱分解され易いことが示唆された。 (2)フキに含まれる抗酸化成分の活性比較 フキに含まれる主要な抗酸化成分である成分Aおよび成分BのDPPHラジカル消去活性のIC50値を求めた。成分Aおよび成分BのIC50値は、マイナーな他の成分よりも低値を示し、活性が高いことが示された。フキ特有の成分Aに関して新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関の異動に伴い、予定していた動物実験を遂行するための環境を整えることができず、研究期間を延期した。一方、当初の計画には無かった先行研究で明らかにしてるフキの他の生理機能について、調理後の有効成分や活性の挙動解析に言及することができ、計画以上のデータの取得ができた。また、これまでに得た知見に関する論文の執筆を行うことができたことから、総合して上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の項目について検討する。 (1)疾病モデル動物における血糖値上昇抑制効果の検証ならびにフキの血糖値上昇抑制成分の作用機序の検討 凍結乾燥したフキの粉末から調製した抽出物および単離した有効成分を疾病モデル動物に経口投与後、糖負荷試験を行い、その効果を確認後、インスリン分泌亢進等の観点から作用機序を検討する。 (2)研究成果の公表 令和3年から令和6年に得られた研究成果を国際学術誌にて発表する。まずは、有効成分の同定ならびに調理・加工における機能性の変化に関する成果について、国際学会において成果の発表を行うとともに、国際学術雑誌への論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の異動に伴い、計画していた動物実験を遂行するための環境を整えることができず次年度に延期したため、動物実験および成果発表のための費用が生じた。次年度、実施する動物実験に約60%を使用予定である。さらに、残りの約40%を国際学会および国際学術誌における成果発表のための費用として使用を計画している。
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