研究課題/領域番号 |
21K02186
|
研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
圓入 智仁 中村学園大学, 教育学部, 准教授 (00413617)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | タイ / ルークスア / ナショナリズム教育 / ラーマ6世 / ラーマ7世 / 子ども |
研究実績の概要 |
研究2年目である本年度も、新型コロナウイルス感染症の影響があり、タイへの渡航ができなかった。そこで、本年度ももっぱら収集済みの資料から、本研究に必要な情報の抽出に取り組んだ。20世紀前半のルークスアに関する情報を集約した冊子や、ルークスアに関連する雑誌記事の読み込みを進めた。 また、入手できている同時期のルークスアの年次報告書の統計に基づき、当時のルークスアに加盟していた子どもの人数の変化に関する論考を執筆した。この論考は、次年度以降に出版される書籍の一部になる予定である。その論旨は概ね、以下の通りである。ラーマ6世王(在1911-1925年)が、自らに忠誠を尽くす子どもの養成を期待してルークスアを創設したことを考えると、ルークスアの人数を、そのまま国王に忠誠を尽くすことを誓った子どもの人数と捉えることができる。そうすることで、当時のタイのナショナリズムの広がりを、数字として説明することが可能となる。ルークスアへの加盟人数と、当時のセンサスに基づく人口を比較することで、その影響は限られたものだったと説明することができると考えている。 さらには、ルークスアを通して子どもたちが学んでいた具体的な内容と、その内容に関する試験結果などを検討する論考の執筆に取り組んでいる。次年度中には研究雑誌に投稿する予定である。 その他、本研究に基づく2つの研究発表を行った。1つは上述のルークスアの人数に関するもので、もう1つは、いずれもイギリスのボーイスカウトと、それに由来するタイのルークスア、日本の少年団の制度や仕組みを比較した。特にそれぞれの「ちかい」や「おきて」の文章や、子どもたちが獲得するべきとされた知識や技能の比較を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響は否めない。様々に関連する影響からタイに渡航できなかったため、本研究の計画段階で想定していた資料の収集ができていない。さらに、引き続き本務校での授業準備や学内業務などの負担が普段より増加したことで、前年度に続いて本研究のエフォートが低下しているように感じている。 論考の執筆が進んでいる点で、前年度の遅れを取り戻しているとも考えているが、全体的には、当初の計画よりも遅れていると判断せざるを得ない。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は新型コロナウイルス感染症に関する水際対策が緩和され、また感染への対応もこれまでとは違うものになることが予想される。これらによりタイへの渡航などが従来よりも容易になると考えている。そこで、複数回にわたってタイに渡航し、本研究に必要な資料の収集にあたりたい。 本務校における業務も通常の状態に戻りつつあるため、研究に充てる時間もこれまでよりは確保できると考えている。なお一層の業務の効率化に取り組むことは言うまでもないが、それによって生じた時間を有効活用しながら、しっかり資料を読み込み、随時文章化するなど論考の執筆に取り組みたい。すでに大きなサイズのディスプレイを購入し、データ化された資料を効率よく読むことができるようになっている。 また、タイ語を読むスピードを上げるため、自らのタイ語の能力向上にも努めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、タイへの調査研究渡航費として計上していた旅費の執行ができなかったことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。次年度以降は渡航制限が緩和されることが期待できるので、複数回にわたってタイに渡航することを検討している。 本年度もタイや東南アジア地域を対象とした教育学、政治学、歴史学に関する日本語や英語の文献を購入することができており、次年度も積極的に本研究に必要な文献を購入したい。特にタイに渡航することができるならば、過去数年の間に出版されたタイ語の文献を購入して、本研究の参考としたい。
|