本研究を通じて,自由保育「運動」が集団主義的な保育実践などの中で生じた,個の思いをより重視する立場に始まり,集団主義的な,あるいは課業中心の保育の強い制約を緩める際に大きな貢献をしてきたことが明らかになった。当時の保育に影響を与えたのは単純な個人中心,子ども中心の主張ではなく,個と集団の関係の中での個の育ちを重視する保育実践に裏打ちされた子ども中心の原理であった。そのため,批判すべき現状がないままにより自由な保育が志向された場合には,自由保育の発想は保育者の指導を妨げ,放任に近い状況を誘発することにつながる。自由保育の発想が放任に近づく原因を歴史的に明らかにした点に本研究の重要な意義がある。
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