研究課題/領域番号 |
21K02442
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
黒山 竜太 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (30533468)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小学生 / レジリエンス / 心理教育 / 動作法 / 心理劇 |
研究実績の概要 |
2023年度は小学生用のレジリエンス測定尺度の開発及び信頼性・妥当性の検証を行うことができ,その成果について学会大会での研究発表及び研究論文として発表することができた。概要としては,中学生以上において適用されていた二次元レジリエンス要因尺度(平野,2010)について,小学生でも読解可能な形に改変したものを児童約900名に対して実施したところ,平野(2010)の提示した因子構造とほぼ同様の構造が確認され,小学生においても適用可能であることが確認された。なお,学級適応感尺度との関係を分析したところ,被信頼・受容感については資質的レジリエンス要因と,また充実感については獲得的レジリエンス要因との関連の強さが示された。さらに,レジリエンスの発達的差異及び性差が見いだされた点は,児童理解を深めるうえで有用な知見であった。 また,小学5年生における授業介入プログラムを実施し,その検証を行った成果について,学会大会で研究発表を行うことができた。概要としては,小学5年生4クラス125名に対してクラスごとに45分単位での授業を行い,その前後で上述の尺度を用いて比較を行った。プログラム内容はペアリラクセイションとペアでのロールプレイング(PDRP)を主体としたもので,児童の主体性を尊重するものであった。結果として,すべての因子においてクラスおよび性別の属性に依らず授業後のレジリエンス得点の上昇が確認され,特に低レジリエンス群に分類された児童の得点が有意に上昇したことが示されたことから,レジリエンス向上のための授業プログラムとしての有意性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では小学4~6年生において授業プログラム介入の実証を行うことを計画していたが,コロナ禍の影響で学校への協力を要請する手続きが滞り,現状として5年生においてしか検証を行うことができていない。 また,当初の予定では最終年度までに教師による実践検証まで行うことを計画していたが,コロナ禍の影響で学校への協力を要請する手続きが滞り,2023年度までに上記の研究を行うことができていない。 そのため,研究期間を延長して引き続き取り組むこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り,今後は4年生及び6年生における授業効果の検証に取り組むことと,担任教師による実践の検証に取り組む。学校での授業時間を用いた取り組みとなるため,必ずしも計画通りに実施することができない可能性があることを念頭におき,2024年度中に可能な範囲まで実施していく。なお,これまでの実践において既に1回限りのプログラムであることの限界が示されていることから,3~5回程度,ないし年間を通じた授業パッケージ化も含めた検討を行うことを計画している。 また,取り組みの成果を学会発表及び論文としての発表を行い,広く研究成果を公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で研究が計画通り遂行することができなかったため,年度内に研究の遂行と共に予算を執行することができず,次年度まで研究を延長して行う。残りの予算は主として,学校現場での実践研究のための旅費及び学会での発表や論文投稿に消化する予定である。
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